「統合失調症」という病気の名前を聞いたことはありますか?
病名は知っていても実際どんな病気なのか?
知らない方も多いのでないでしょうか。
統合失調症は、100人に一人が発症するとも言われている身近な病気です。
しかし、なぜ統合失調症は起こり、どのような経過をたどるのか?
知っているようで、実はあまり知られていないのが統合失調症です。
「統合失調症ってどんな病気?」では、統合失調症の全体図から、症状、治療などについて詳しく解説していきます。
第18回は、「治療はどのように行われるのか ③ 病期ごとの治療方針」の続き「治療はどのように行われるのか ④ 入院が必要になるケース・治療と退院まで」についてみていきます。
目次
どのような治療が行われるのか ④
入院が必要になるケースと入院の形態
現在、統合失調症の治療は、通院しながら治療するのが基本ですが、患者さんの状態によっては、入院治療が必要になることがあります。
入院を考えるのは、次のようなケースです。
- 幻覚、妄想、興奮といった陽性症状がとても強く、他人の危害を及すおそれがある。
- 自傷行為や自殺を企てるおそれがある、
- 受診を拒絶しているため、治療が行えない。
- 自宅では必要な服薬や療養ができない。
- 薬の処方量を決めるため、こまめな観察が必要。
- 入院を必町としる身体疾患がある。
- 昼夜逆転など、生活リズムが非常に乱れている、
- 家族が十分に介助できない。
- 家族が十分な休息をとりがたっている。
入院というと、「長期間、社会から隔離される」というイメージがあり、できるだけ入院はしたくないと考える患者さんや家族も多いようです。
確かに、かつては重症の患者さんが多く、社会に統合失調症の患者さんを受け入れる受け皿が少なかったこともあり、長期入院を余儀なくされていました。
しかし、現在では入院した患者さんの8割以上が退院し、通院しながらの自宅療養に戻っています。
入院は、薬物療法やリハビリ、十分な休息といった必要は治療を、より安全に、より確実に行うための一時的な治療手段です。
患者さんと家族、両方のためにうまく活用しましょう。
なお、統合失調症などの精神科医療における入院は、精神保健福祉法に戻づくいくつかの形態があり、大きく2つに分けられます。
1つは、本人の同意のもとで行われる入院。
もう1つは、本人の同意なしに行われる入院です。
入院の多くは本人の同意のもとで行われますが、患者さんの状態は状況によっては、強制的に入院させる場合もあります、
さまざまな入院の形態
本人の同意のもとで行われる入院
本人が入院の必要性を正しく理解した上で、本人の意思で行う入院。
原則として、本人の希望があり、医師がそれを許可すれば、自由に退院することができる。
本人の同意なしの行われる入院
本人が入院を拒む時、本人の同意が得られなくても、精神保健指定医が診察を行い、入院が必要と判断すれば、保護者の同意に基づいて強制的に入院させることができる。
自傷他害や自殺のおそれがある場合、警察官などが都道府県知事に通報し、行政の権限で強制的に入院させるものを措置入院という。
通常2名の精神保健指定医が診察を行い、入院が必要と判断された場合に入院となる。
退院するには、都道府県知事の「措置解除」決定は必要。
緊急を要し、措置入院にかかわる手続きが間に合わない場合に、1名の精神保健指定医の診察・判断によって、72時間以内に2名の精神保健指定医が再度診察を行い、措置入院に切り替えなければならない。
患者さんに意識障害や昏迷などがあり、精神保健指定医が緊急の入院が必要と判断した場合、本人や保護者の同意が得られなくても、72時間に限って応急入院指定を受けた病院に強制的に入院させることができる。
応急入院は、家族と連絡がとれない場合などに行われる。
入院中の治療と退院まで
精神科の病棟は一般病棟とは異なり、自傷他害のおそれがある患者さんなどを保護する観点から、2種類の病棟に分けられています。
閉鎖病棟
「閉鎖病棟」は、措置入院や医療保護入院など、強制入院してきた患者さんが入る病棟です。
通常は病棟のドアに鍵がかけられていて、患者さんの出入りが制限されます。
自殺のおそれがあったり、自分の行動がコントロールできない患者さんの場合は、、閉鎖病棟の中に設けられた「保護室(隔離室)」という個室に入ることもあります。
開放病棟
任意入院の患者さんが入るのが「開放病棟」です。
基本的には一般病棟と同じ構造で、患者さんの出入りは自由ですが、セキュリティの観点から夜間の出入り口が施錠されていることが多いようです。
入院中の治療は、薬物療法とリハビリ、そして十分な休養が中心となり、そのプロセスは大きく3つのステップに分けることができます。
STEP 1
入院当初は、脳の刺激などに加えて、疲労、消耗した脳を修復させるための期間(急性期)です。
抗精神病薬を中心とする薬物療法と十分な睡眠時間の確保が治療の中心となります。
STEP 2
急性期の陽性症状が治まってきたら、失われた精神エネルギーを蓄える時期(休息期)です。
安息と静養を中心に、生活リズムを整え、食事、トイレ、着替えなどの身の回りのことを自主的にできるようにします。
また、無理のない範囲でリハビリも開始します。
STEP 3
回復期に入ったら、作業療法やSST(社会生活技能訓練)などのリハビリにも積極的に取り組み、外出・外泊を試すなどして退院の準備をします。
以上のプロセスを経て、順調にいけば多くの患者さんが3か月くらいで退院できるまでに回復します。
次回、「急性期の治療 ① 抗精神病薬の種類と働き」へ続く