「統合失調症」という病気の名前を聞いたことはありますか?
病名は知っていても実際どんな病気なのか?
知らない方も多いのでないでしょうか。
統合失調症は、100人に一人が発症するとも言われている身近な病気です。
しかし、なぜ統合失調症は起こり、どのような経過をたどるのか?
知っているようで、実はあまり知られていないのが統合失調症です。
「統合失調症ってどんな病気?」では、統合失調症の全体図から、症状、治療などについて詳しく解説していきます。
第20回は、「急性期の治療 ① 抗精神病薬の種類と働き」の続き、「急性期の治療 ② 抗精神病薬の副作用と補助的に使用する薬」についてみていきます。
急性期の治療 ②
抗精神病薬の副作用
抗精神病薬は作用が強力な反面、作用な福作用が強く現れやすいといえます。
特に激しい陽性症状を強力に抑える定型抗精神病薬は、「錐体外路症状」という特徴的な副作用が現れやすくなります。
体の筋肉や内臓を動かす運動神経には、脳から筋肉へ直接指令を伝える「錐体路」という経路の他に、無意識のうちに筋肉の緊張を調節する経路があり、これを「錐体外路」といいます。
抗精神病薬の副作用によって錐体外路が障害されると、
- 手の震えや筋肉の硬直が起こる「パーキンソン症状」
- 筋肉の緊張や硬直により、舌が出たり首が傾斜したり、眼球が上を向いたりと、自分の意思とは関係なしに動作や姿勢に異常が起こる「急性ジストニア」
- 手足がムズムズしてじっとしていられなくなる「アカシジア」
などが現れます。
これらの錐体外路症状に対しては、「抗パーキンソン病薬」を併用することで症状の改善を図ることができます。
非定型抗精神病薬は、錐体外路症状のような副作用は比較的少ないとされていますが、副作用の心配がないわけではありません。
MARTAに分類される薬では、代謝異常による体重増加や資質異常症、糖尿病(高血糖)などを生じることがあります。
その他に抗精神病薬には、
- 口の渇きや便秘
- 立ちくらみ
- 失神
- 頻脈
- 発汗過多
- 排尿障害
など、自律神経系の副作用が知られています。
また、ホルモン系への影響によって、女性の場合は、
- 月経異常
- 乳汁分泌
男性の場合は、
- 性欲減退
- 勃起不全
- 女性のように乳房がふくらんでくる女性化乳房
などがみられることがあります。
まれに生じる副作用として、「悪性症候群」があり、
- 突然に高熱
- 発汗
- 筋肉の萎縮
- 意識障害
などが引き起こされることがあります。
悪性症候群は命にかかわる重大な副作用なので、早期発見が重要です。
これらの副作用が現れた場合、直ちに主治医または薬剤師に相談し、自己判断で薬を減らしたり、中断しないようにしてください。
補助的に使用する治療薬
統合失調症の薬物療法では、患者さんの症状や副作用などに応じて、抗精神病薬以外の薬を補助的に用いることがあります。
中でも抗精神病薬と併用されることが多い薬は、
- 睡眠薬
- 抗不安薬
- 抗うつ薬
- 気分安定薬
です。
統合失調症の治療では、薬物療法やリハビリとともに十分な睡眠と休息が大切です。
十分に睡眠が取れない場合は「睡眠薬」を使います。
ただし、いつまでも睡眠薬に頼るのではなく、生活リズムや環境を整えて、自然に眠れるようになることが望ましいといえます。
「抗不安薬」は、不安やイライラが強いときに用いられる薬で、いわゆる「精神安定剤」と呼ばれるものです。
日本でよく使われているのは、「ベンゾジアゼピン系」の抗不安薬で、GABAという神経伝達物質に作用して脳の興奮を抑えます。
「抗うつ薬」は、抑うつ気分を軽減させる薬です。
現在、日本で使用できる抗うつ薬は、
- 三環系抗うつ薬
- SSRI
- SNRI
- NaSSA
などの種類があり、いずれもセロトニンとノルアドレナリンの働きを高めるという共通の作用があります。
「気分安定剤」は、極端に気分が高揚したり、逆に落ち込んだりと、波がある精神状態を安定させるための薬です。
日本では、「リチウム(商品名:リーマスなど)」という気分安定剤の薬がよく使われています。
この薬は、少量を使う分には比較的安全な薬ですが、手の震え、めまい、吐き気、意識障害などを引き起こすことがあり、定期的に血液検査を受けて、血中のリチウム濃度をチェックする必要があります。
その他に、パーキンソン病の治療薬である「抗パーキンソン病薬」を併用することがあります。
次回、「急性期の治療 ③ 通電療法/家族の対応」へ続く