「統合失調症」という病気の名前を聞いたことはありますか?
病名は知っていても実際どんな病気なのか?
知らない方も多いのでないでしょうか。
統合失調症は、100人に一人が発症するとも言われている身近な病気です。
しかし、なぜ統合失調症は起こり、どのような経過をたどるのか?
知っているようで、実はあまり知られていないのが統合失調症です。
「統合失調症ってどんな病気?」では、統合失調症の全体図から、症状、治療などについて詳しく解説していきます。
第21回は、「急性期の治療 ② 抗精神病薬の副作用と補助的に使用する薬」の続き、「急性期の治療 ③ 通電療法/家族の対応」についてみていきます。
目次
急性期の治療 ③
薬が使えない時、緊急性がある時は「通電療法」も
「通電療法」とは、脳に電気的な刺激を与えることで、脳の神経細胞を活発化し、精神状態を改善する治療法です。
薬が効かない難治性うつ病や重度のうつ病で、自殺のリスクの高い患者さんなどの行われる治療法ですが、統合失調症でも急性期の症状が強く、
- 薬の効果を示さない場合
- 副作用のために薬を服用できない場合
- 緊張病性の興奮や低迷が強い場合
- 自殺の危険性が高い場合
などに通電療法が検討されることがあります。
通電療法では、かつては人為体にけいれん発作を起こさせるため敬遠されがちでしたが、現在は「筋弛緩薬」を用いることで、けいれんを起こすことなく安全に行えるようになっています。
治療は全身麻酔で行われるので、患者さんが苦痛を感じることはありません。
全身麻酔を施し、筋弛緩薬を投与したあと、額とこめかみの辺りに電極パッドを付けて、100ボルト程度の軽い電流を流します。
通常は1日1階、週に2~3回、合計6~12回を1クールとして行います。
通電療法の有効性は高く、即効性があります。
また、抗精神病薬にみられるような副作用もなく、安全な治療法といえます。
ただし、通電療法の効果は長くは続きません。
治療後すぐに効果が現れますが、数か月で再発することが多いとされているため、再発防止には、やはり薬物療法を行う必要があります。
また、通電療法には抗精神病薬のような副作用はありませんが、治療の前後の記憶が薄れたり、今の時間や今いる場所が分からなくなる「見当識障害」が一時的に起こることがあります。
これは通常、1時間ほどで回復し、記憶は次第に思い出し、見当識も戻ってきます。
なお、通電療法を受ける時は、必ず本人か家族の同意が必要です。
患者さんに安心を与える環境づくりと家族の対応
統合失調症の治療は、家族の存在と対応が大きな役割を果たします。
統合失調症を発症した患者さん、特に急性期の患者さんは混乱し、不安や恐怖にさいなまれ、
「誰かが自分を陥れようとしている」
「誰かがああしろ、こうしろと命令する」
などの幻聴や妄想を訴えることがしばしばあります。
そんな時に、
などと頭から否定してはいけません。
幻聴や妄想も本院にとっては現実なのです。
患者さん本人が大変つらく、不快で、空恐ろしい気持ちでいることに違いはないのです。
家族は統合失調症という病気を正しく理解し、本人の言葉を受け止めてあげてください。
幻聴に対しては、
と本人の気持ちに共感するようにします。
妄想を語り始めたら、まず耳を傾けるようにします。
ただし、幻聴や妄想そのものについては、否定も肯定もしないようにしてください。
と、服薬の習慣がつくように促しましょう
また、統合失調症の患者さんには、安心してゆっくり休める場所と環境が必要です。
特に物音に敏感になっている場合や、被害妄想から他人の話し声を自分の噂話をしていると捉えてしまう場合などは、静かな環境を求めていることが多いものです。
自室にこもってしまうのは、余計な音や声を聴きたくないからかもしれません。
自室にいることで落ち着くようであれば、しばらくはそっとしておいてあげましょう。
適切な治療を受けて症状が改善されれば、引きこもることもなくなります。
家族の適切な対応は、患者さんに安心を与え、薬物療法をはじめとする医療の笹瀬となり、回復へとつながります。
統合失調症~家族の心得
心得 その①
- 本人の気持ちに寄り添う
幻聴や妄想も本人にとっては現実。本人が一番つらく、不安で空恐ろしいことを共に理解する
心得 その②
- 本人の気持ちに共感する
妄想を語り始めたら、まず耳を傾け「そんな声が聞こえるなら、さそがしツラいでしょう」と共感する。否定も肯定もしない
心得 その①
- 服薬の習慣を促す
「それは大変だね」「薬を飲んで気持ちを鎮めれば楽になれるよ」など本人の気持ちになって、服薬を勧める
心得 その①
- 安心してゆっくり休める環境が必要だと理解する
本人にとって一番落ちつく場所があれば、そこが「引きこもり」の部屋であってもしばらくそっとしておいてあげる
次回、「休息期・回復期の心得」へ続く