「統合失調症」という病気の名前を聞いたことはありますか?
病名は知っていても実際どんな病気なのか?
知らない方も多いのでないでしょうか。
統合失調症は、100人に一人が発症するとも言われている身近な病気です。
しかし、なぜ統合失調症は起こり、どのような経過をたどるのか?
知っているようで、実はあまり知られていないのが統合失調症です。
「統合失調症ってどんな病気?」では、統合失調症の全体図から、症状、治療などについて詳しく解説していきます。
第25回は、「症状が落ち着いたあとに始める療法」の続き「社会復帰のための療法」についてみていきます。
目次
社会復帰のための療法
リハビリテーションは無理せず気長に続けることから
心と体を十分に休息させ、枯渇したエネルギーが回復してくると、患者さんの気持ちも少しずつ外に向いてきます。
このように、回復期に入ったら社会復帰に備えるためのリハビリを始めます。
しかし、回復期に入ったからといって、いきなり何でもできるようになるわけではなく、気力やや体力が回復するスピードには個人差があります。
また、
どんなことが得意なのか
どんなことが苦手なのか、
どんなことを目指したいのか
などは、患者さんにとって異なります。
そのため、統合失調症のリハビリには決まったプログラムがあるわけではなく、その人に合ったリハビリを選び、その人のペースに応じて取り組んでいくことが大切になります。
また、回復期は数年多淫いで経過することが多いので、リハビリは無理せず気長に続ける必要があるということを理解しておきましょう。
また、社会復帰に向けたリハビリというと、職業訓練のようなものをイメージされるかもしれません。
もちろん、リハビリの中には新たな就労のための訓練や資格取得を目指すものもありますが、一足飛びに辿り着けるわけではありません。
統合失調症のリハビリがまず目指すところは、
熱中できること
充実感や達成感を味わえること
です。
健常であれば、ごく当たり前の自然な心の動きですが、統合失調症の患者さんは、それさえも難しい状態にあるのです。
回復期のリハビリでは、さまざまなことを体験しながら、できることや楽しいと思えることを一つずつ増やしていくことが大切です。
作業療法
日常生活や社会生活への適応を取り戻すためのリハビリには、「作業療法」や「SST(社会生活技能訓練)」などがあります。
「作業療法」とは、心身に障害のある人に対して、さまざまな作業を通して機能回復を図ったり、精神状態の安定や対人関係の改善などを目指す療法をいいます。
統合失調症の場合、作業に集中することで幻聴の気をとられる時間を少なくすることもできます。
具体的な作業としては、
- 絵画
- 習字
- 手芸
- 陶芸
- 木工
- 折り紙
- コラージュ
- 料理
- ダンス
- 室内ゲームなどのレクリエーション
- 袋詰め
- 折り箱づくり
- 造花づくり
などの室内で行う簡単な作業。
- 園芸
- 農作業
などの屋外での作業があります。
これらの中から、患者さんの状態や興味・関心、目的などに応じて作業を選び、作業療法士の指導のもとで作業を行います。
こうしてみると、中には就労を意識した作業もあるように思えますが、作業療法の本来の目的は特定の職業技能を身につけることではありません。
あくまでも楽しみながら、よりよい生活を送るための方法を習得することが目的です。
そのため、仕事をこなすような感覚で無理に取り組むのではなく、患者さん自身が自主的に参加して、楽しめることが何よりも大切になります。
もし作業をしていて、
「苦痛に感じる」
「こんなことをしていて意味があるのか」
などと思うようなことがあれば、担当の作業療法士や医師に相談して、作業内容を見直すことも必要です。
強制的な作業は、かえってストレスとなり、治療効果を得られないだけでなく、症状を悪化させてしまうことがあります。
まずは、自分が興味を持てそうなこと、やってみたいことから始めてみましょう。
SST(社会生活技能訓練)
「SST」は、「ソーシャル・スキル・トレーニング」の略です。
日本語では、「社会生活技能訓練」または「生活技能訓練」とも呼ばれます。
SSTでは、精神障害を抱える人が自立した生活を送るために必要な技能を学び、学んだことを日常生活で応用できるようにトレーニングします。
具体的には、次の3つの技能の向上を目指します。
【1】日常生活技能
- 食事
- 身だしなみ
- お金の管理
- 買い物
- 料理
- 洗濯
- 整理整頓
など、日常生活に必要な基本的な技能を学びます。
【2】社会生活技能
主に、社会生活に不可欠となる対人関係を学びます。
社会に出たら人と関わらずにはいられません。
対人関係の問題は、患者さん自身が最も解決したいと望むことでもあるのです。
具体的には、
- 挨拶をする
- 電話をかける
- 人に何か質問する
- 電話をかける
- 人に何か質問する
- 医師に自分の病状を伝える
などの基本会話を習得します。
さらに、地域生活への参加を目指したり、結婚生活や友情の維持を目的とした対人関係の作り方などを学ぶこともあります。
【3】病気の自己管理能力
- 服薬を続けていくために必要な知識
- 副作用への対処法
- 症状が現れた時おコントロール方法
などを患者さんが学び、病気とうまく付き合っていく術を身につけます。
SSTは、「ロールプレイ(役割縁起)」という方法で行われます。
数人のグループで日常生活で起こるさまざまな場面を想定して、参加者たちがその場に登場する役割をそれぞれ演じることで、適切な行動や言動を学びます。
そして、学んだことを実際の日常生活に応用できるようにトレーニングします。
できなかったことや苦手なことが、一つひとつできるようになることで自信を回復し、QOLの向上や社会復帰へとつなげます。
デイケアの活用で社会参加の準備を
統合失調症の患者さんは、家に閉じこもりがちになることが多く、社会性や活動性が低下してしまいます。。
しかし、いきなり復学や復職を果たすのは難しく、まずは地域社会にうまく馴染めるようになることが大切です。
そこで、社会参加えの準備として、ぜひ活用したいのが「デイケア」です。
デイケアは、福祉や医療の関連施設が提供するサービスの一つで、病院やクリニック、精神保健福祉センター、保健所などで行われています。
デイケアでは、同じ病気を抱えている患者さんが集まり、一緒に過ごすことで協調性を学ぶことができ、定期的に通うことで、規則正しい生活リズムをつくることもできます。
具体的な活動内容は施設によって異なりますが、多くは作業療法が中心となります。
- スポーツ
- レクリエーション
- ゲーム
- サークル活動
- 軽作業
- 料理
- 手芸
- 工芸
- パソコン教室
- 音楽活動
などの他、SSTを取り入れているところもあります。
これらの活動を通じて、日常生活をスムーズに送れるようになること、さらには社会復帰へ目指します。
デイケアには、患者さんの家族にとっても、患者さんと一定時間離れることで、自分の時間を持てるようんある、というメリットもあります。
デイケアは本来、日中6時間のサービスとなりますが、その他にも16時以降4時間のナイトケア、デイケアとナイトケアを組み合わせた10時間にデイナイトケア、日中3時間のショートケアなどがあります。
また、「デイホスピタル(DH)」といって、外来通信しながら、日中の時間帯に入院治療と同様の治療を集中的・重点鉄器に受けらシステムもあります。
患者さんの状態や家族の事情などを考慮して最適なものを参加するといいでしょう。
次回、「家族ができる復帰へのサポート」へ続く