「統合失調症」という病気の名前を聞いたことはありますか?
病名は知っていても実際どんな病気なのか?
知らない方も多いのでないでしょうか。
統合失調症は、100人に一人が発症するとも言われている身近な病気です。
しかし、なぜ統合失調症は起こり、どのような経過をたどるのか?
知っているようで、実はあまり知られていないのが統合失調症です。
「統合失調症ってどんな病気?」では、統合失調症の全体図から、症状、治療などについて詳しく解説していきます。
第5回は、「再発防止と誤解・偏見」の続き、「患者さんは病識がないことが多い」についてみていきます。
目次
統合失調症の患者さんは病識がないことが多い
患者さん自身は病気を自覚していない
自分は病気であると認めることを「病識」といいます。
病気の早期発見や早期治療、治療の継続には、患者さん本人が病識を持つことが大切です。
しかし、統合失調症の場合、自分が病気であることを理解できないことが多いです。
通常、心身に何らかの症状があれば病気を疑い、医療機関を受診したり、病名を告げられれば「自分は病気なのだ」と自覚することができます。
しかし、その病気に対して過剰なネガディブイメージを抱いている場合などは、認めたくないという心理が働いて、病識を持つのに時間がかかることもあります。
統合失調症の場合は、こうした病気に対する誤解からではなく、病気の症状そのもののせいで、患者さんは病気であることを自覚できなくなります。
統合失調症の典型的な症状は、幻覚や妄想ですが、幻覚や妄想も患者さん本人にとっては、【現実】に他なりません。
周囲の人や周囲で起こっていることがおかしいのであって、自分が病気だという考えには到底およばないのです。
統合失調症という病気は、患者さん本人が病識をもてないことが、早期治療や治療の継続を難しくする一因となっているともいえます。
では、統合失調症を疑い、受診するチャンスは、どこにあるのでしょうか。
家族や周囲の人が、本人の変化にいち早く気づくことができれば、早期受診につなげることができます。
また、幻覚や妄想といった激しい症状だけでなく、統合失調症には発症前の前触れのような症状がみられることがあります。
家族や周囲の人が感じる統合失調症のサイン
統合失調症の発症前には、前駆症状、または、初期症状と呼ばれる変化がみられることがあります。
個人差はありますが、よくみられるのが
- 眠れない
- 勉強や仕事に集中できない
- 気分が落ち込む
- 不安感や焦燥感がある
などです。
本人はツラさや不快感を感じていますが、病気と結びつけて考えるのは難しく、まして自分自身で統合失調症を疑うことはほとんどありません。
このような内面の変化は。日常生活や行動にも現れてきます。
例えば、不眠から昼夜逆転の生活パターンに変わったり、急に仕事や学校の成績が悪化したり、理由もなく仕事や学校を休むようになったりします。
また、「着替えない」「顔を洗わない」「歯を磨かない」など、身だしなみに気を使わなくなることもあります。
「口数が減る」「外へ出たがらない」「自分の部屋に引きこもる」などの自閉傾向もみられます。
ただ、これらの変化は日常的に起こりうるものでもあります。
「仕事のストレスが溜まっているから」
などの理由づけをしてしまえば、問題の深刻さを見逃してしまうかもしれません。
しかし、前駆期には、統合失調症特有のものがあります。
その1つが、
というものです。
「食事に毒が入っている」
「監視されている」
「浮気されている」
などと訴えますが、統合失調症の場合、疑いというより、確信に満ちた言い方をします。
また、
- 独り言を言う
- 奇妙な話し方をする
- 会話が支離滅裂になる
なども、統合失調症が強く疑われる症状です。
以上のような症状や変化がみられたとき、病気なのか、疲れているだけなのかを判断するのは難しいかもしれません。
しかし、急な変化、特に性格が変わってしまったように見えるときは注意が必要です。
一度、精神科を受診すべきといえます。
統合失調症の前駆症状
本人が感じている内面的な変化
- 眠れない(不眠)
- 勉強や仕事に集中できない
- 考えがまとまらない
- イライラする
- 気分が落ち込む
- 漠然とした不安感、違和感がある
- 焦燥感がある
- 現実感がない
- 物音や光が異様に気になる
- 見張られている、自分を陥れようとしている、浮気をされている、盗聴されている(被害妄想)
- 頭痛、胃痛、めまい、動悸、吐き気、食欲低下などの体調不良
家族や周囲の人が感じる生活・行動面での変化
- 夜、眠れない(不眠)
- 昼夜逆転の生活パターンになる
- 学校や仕事の成績が急に悪化する
- 理由もなく学校や仕事を休むようになる
- 着替えない、顔を洗わない、葉を磨かないなど、身だしなみに気を使わなくなる
- 部屋が乱雑になる
- 口数が減り、自分の部屋に引きこもる
- 人間関係が急に悪化、あるいは対人交流が急に減る
- 突然、怒りっぽくなる、攻撃的・暴力的になる
- ひとり事を言ったり、ひとり笑いをする
- 確信的に被害妄想を訴える
- 奇妙な話し方をしたり、奇異な行動をとる
- 会話が支離滅裂になる
次回、「統合失調症の特徴的な症状」へ続く