「統合失調症」という病気の名前を聞いたことはありますか?
病名は知っていても実際どんな病気なのか?
知らない方も多いのでないでしょうか。
統合失調症は、100人に一人が発症するとも言われている身近な病気です。
しかし、なぜ統合失調症は起こり、どのような経過をたどるのか?
知っているようで、実はあまり知られていないのが統合失調症です。
「統合失調症ってどんな病気?」では、統合失調症の全体図から、症状、治療などについて詳しく解説していきます。
第8回は、「急性期に多くみられる『陽性症状』…幻覚・妄想」の続き、「『思考障害』と『自我障害』」についてみていきます。
「思考障害」と「自我障害」
考えがうまくまとまらない「思考障害」
統合失調症の陽性症状の中に、「思考障害」があります。
思考とは、文字通り、「思い、考える」ことを言います。
普段、私たちは意識していませんが、思いや考えをめぐらせる時、「物事の意味や内容を結びつけ、まとめながら事実に沿って判断や推理」を行っています。
しかし、思考や感情といった精神活動に変調をきたす統合失調症では、さまざまな形で思考が障害されることがあります。
思考の障害は、大きく分けて2つあります。
1つが、「思考内容の障害」です。
これは、思考する内容そのものが事実から大きく逸れてしまったり、事実ではないことを確信してしまうもので、その代表が「妄想」です。
そしてもう1つが「思考過程の障害」です。
思考過程の障害とは、先ほど述べた「物事の意味や内容を結びつけ、まとめあげながら事実に沿って判断や推移」を行う、と一連の流れが障害され、スムーズな思考が困難になることをいいます。
思考過程の障害の中でも、特に統合失調症の人に現れやすいのが「思考滅裂(しこうめつれつ)」です。
考えがまとまらず、言っていることに一貫性がなくなり、ひどくなると聞いている方は何を言っているのか理解できなくなります。
統合失調症によくみられる「支離滅裂な会話」は、まさにこの思考滅裂によるものです。
他に、
- 思考が突然中断・停止してしまう「思考途絶」
- 思考のスピードが遅くなる「思考迂遠」
- 同じ内容、同じ言葉が繰り返し現れ、考えが先に進まなくなる「思考保続」
などがあり、これらの障害が統合失調症の人の話をわかりにくいと感じると同時に、本人も「理解されないつらさ」を抱えてしまいます。
自分と他人の境界が定まらない「自我障害」
統合失調症の陽性症状に、もう1つ「自我障害」というものがあります。
「自我」とは、わかりやすく言うと「自分自身」のことです、
私たちは自分のことを「自分自身である」と認識することができます。
これを「自我認識」といいますが、一方で、自分ではない者は「他人」だということも認識することができます。
この、自分と他人の境界線を「自害境界」といいます。
自我障害とは、普通ならはっきり区別されるはずの自我境界があいまいになり、自我意識さえも失われてしまう状態をいいます。
たとえば、統合失調症の人は自分で行動しているのか、何者かに操られているように感じることがあります。
これは、「作為体験(させられ体験)」といい、まさに「自分が自分の意思で行動している」という自我意識が障害されている状態です。
作為体験には、「~しろ」「~するな」といった現用の命令に支配されて行動する場合と、幻聴ではなく、「体が勝手に動いてしまう」場合とがあります。
また、
- 自分の考えていることが世間に伝わり、広まっていると感じる「思考伝播」
- 自分の秘密や考えが外に漏れていると感じる「自我漏洩症状」
これらの症状では自分の考えが周囲に知れ渡ってしまうので、本人にとってはプライバシーが完全に奪われた状態といえます。
逆に、
- 外界から考えや異物が自分の中に入ってきたり、他人に考えを吹きこまれていると感じる「思考吹入」
- 自分の考えが他人に干渉されていると感じる「思考干渉」
- 自分の意思とは関係なく、考えやイメージが頭に浮かんでくる「自生思考」
- 他人や異物が自分の中に侵入してくるように感じる「侵入症状」
などがあります。
次回、「休息期・回復期に多くみられる『陰性症状』」へ続く