「統合失調症」という病気の名前を聞いたことはありますか?
病名は知っていても実際どんな病気なのか?
知らない方も多いのでないでしょうか。
統合失調症は、100人に一人が発症するとも言われている身近な病気です。
しかし、なぜ統合失調症は起こり、どのような経過をたどるのか?
知っているようで、実はあまり知られていないのが統合失調症です。
「統合失調症ってどんな病気?」では、統合失調症の全体図から、症状、治療などについて詳しく解説していきます。
第9回は、「『思考障害』と『自我障害』」の続き、「休息期・回復期に多くみられる『陰性症状』」についてみていきます。
休息期・回復期に多くみられる『陰性症状』
感情の平坦化や意欲の低下
急性期の陽性症状が落ち着いてくると、続いて現れるのが「陰性症状」です。
陰性症状には、以下のようなものがあります。
まず1つが、喜怒哀楽といった感情の起伏がと乏しくなる「感情の平板化(感情鈍麻)」です。
物事に対して適切な感情がわかなくなるので、楽しいはずの場面で顔をしかめたり、それほど楽しくない場面で笑顔をつくったりすることがあります。
もう1つは、「意欲の低下」と「無気力」です。
仕事や学業に対する意欲を失い、自ら進んで物事を行わなくなります。
物事に集中して取り組むことが困難になり、根気や持続力もなくなります。
陰性症状が悪化すると、「無作為・自閉」という状態になってしまうこともあります。
無為とは、何もやる気が起きなくなってしまう状態。
自閉とは、物事や他者への興味・関心を一切失い、自分だけの世界にひきこもってしまうことをいいます。
無為・自閉の状態になると、身の回りのことや、身だしなみに無頓着になり、自室に引きこもったまま、1日中何もせずにぼんやりして過ごすようになります。
こうした陰性症状は、長く続くと「生活のしづらさ(生活障害)」が残り、社会復帰を困難なものにします。
幻覚や妄想といった激しい陽性照応に比べると、一見地味な陰性症状は、症状として認知気されにくい上に、「いつまでも怠けている」「努力が足りない」などと誤解されがちですが、統合失調症の長い経過で問題となるのはむしろ陰性症状なのです。
統合失調症の治療においては、
- 陰性症状を「病気の症状」として正しく理解すること
- 陰性症状を上手にコントロールしていくこと
これらが重要になります。
次回、「生活活動に関わらる第3の症状『認知機能障害』」へ続く