日々の生活の中でこんな気持ちになったことはありませんか?
自分が正しいと思うことは、なんと言われても変えられない…
商品を間違えられても、変えてもらうことができない…
自分の意見を通すために、人の気持ちを配慮できない…
このような状況が続くと、心の中に不満が溜まったり、周囲と関係が悪化してしまうなど、結果的にあなたの生活の質を下げてしまいます。
こうしたトラブルを解決し、より爽やかに生きるための方法が「アサーション」です。
お互いにとって心地いい関係を作るために「アサーション」を学んでみませんか?
第2回は、「3つの自己表現」の続き、「アサーションってなんだろう?」を解説していきます。
目次
まずはアサーションチェック!
アサーションについて詳しく理解する前に、まずはあなたの今の自己表現についてチェックしてみましょう。
あなたが普段、どのように対応しているか考えながら、「はい」か「いいえ」で答えてみてください。
アサーションチェックリスト
自分から働きかける言動
- 誰かにいい感じを持った時、その気持ちを表現できる……はい・いいえ
- 自分の長所や、成し遂げたことを人に言うことができる……はい・いいえ
- 自分が神経質になっていたり、緊張している時、それを受け入れることができる……はい・いいえ
- 見知らぬ人たちの会話に気軽に入っていくことができる……はい・いいえ
- 会話の場から立ち去ったり、別れを言ったりすることができる……はい・いいえ
- 自分が知らないことや、分からないことがあった時、それについて説明を求めることができる……はい・いいえ
- 人に援助を求めることができる……はい・いいえ
- 人と異なった意見や感じを持っている時、それを表現することができる……はい・いいえ
- 自分が間違っている時、それを認めることができる……はい・いいえ
- 適切な批判を述べることができる……はい・いいえ
相手の言動に対するあなたの言動
- 人からほめられた時、素直に対応できる……はい・いいえ
- あなたの行動を批判された時、受け応えができる……はい・いいえ
- あなたに対する不当な要求を拒むことができる……はい・いいえ
- 長電話や長話の時、自分から切る提案をすることができる……はい・いいえ
- あなたの話を中断して話し出した人に、そのことを言える……はい・いいえ
- パーティーや催し物への招待を、受けたり断わったりできる……はい・いいえ
- セールスマンや店員からの強いすすめを断ることができる……はい・いいえ
- あなたが注文した通りのものが来なかった時、そのことを言って交渉ができる……はい・いいえ
- あなたに対する人の好意がわずらわしいと感じた時、断わることができる……はい・いいえ
- あなたが援助や助言を求められた時、必要であれば断わることができる……はい・いいえ
「いいえ」の数はいくつありましたか?
「いいえ」の項目は、あなたが自己表現できていない、または苦手な領域です。
半分以上、「いいえ」があった場合、あなたは普段の生活や人間関係に支障を感じているかもしれません。
また、「はい」と答えた項目についても、もう一度チェックしてみてください。
その「はい」は、心から納得できているものか?
もしくは、相手に対して否定的な感情を持ったものだったり、腹立たしさを攻撃的に表現しているものだったりしないでしょうか?
もしそうなら、その「はい」は◎(二重丸)にしておいてください。
その項目では、あなたは自分の意思や気持ちを大切にしていても、相手を配慮していない言動をしている可能性があります。
判定の目安として、
「はい」の数が10個以上あれば、今の時点であなたのアサーションは普通以上。
「はい」の〇が少なければ、うまくアサーションができない傾向が多いようです。
アサーションってなんだろう?
「アサーション」は、自分も相手も大切にする自己表現という意味を持つコミュニケーションの考え方と方法ですが、日本語にはこのような意味を表す言葉はありません。
そこで、「アサーション」という言葉をそのまま使って、コミュニケーションについて考えていきます。
アサーションの考え方では、本来なら「頼むべきこと」を子どもや部下に命令したり、押し付けて同意させ、自分の思う通りに相手を動かそうとすることを「攻撃的自己表現」と言います。
反対に、「頼んでいいこと」を頼まなかったり、断わってもいいのに引き受けてしまったりする言動を「非主張的自己表現」と言います。
「アサーション」は、そのいずれでもなく、頼みごとがある時は、「頼みたい」と伝え、相手から引き受ける・引き受けないと言われることもありうる、と考える自己表現です。
相手の状況によって返事が大きく「イエス」「ノー」に分かれることを知っていて、それに対してこちらも相手に同意したり、事情を説明して再度依頼するなどの選択や話し合いができると考えます。
大声で怒鳴らないとしても、相手の自己表現の選択を許さず、自分の言いたい分だけを通そうとしているなら、それは「攻撃的自己表現」になります。
自分の言いたいことだけを、はっきり言えばいい、ということではないのです。
反対に、相手を立てて大切にしていても、自分から自己表現の選択をしないで、言いたいことを引っ込めて相手の言う通りに従うなら、それは「非主張的自己表現」になります。
「アサーション」は、双方を大切にするやりとりを考えて、その試みをして、双方が理解し合い、葛藤がある時には、歩みよって物事を勧めようとするコミュニケーションです。
アサーションの意味が分かると、世界中の人にとって、とても大切な考え方であり、意味があることだと分かると思います。
アサーショントレーニング
アサーションの考え方と方法は、アメリカの心理学者ウオルビーによって開発され、最初はカウンセリングの方法のひとつとして活用されていました。
内気で人と会話をすることが苦手な人や、コミュニケーションがうまくできない人、引っ込み思案で思ったことが言えない人などが対象でした。
相手の思いをかなえようとする人は、相手にとっては「優しい、いい人」ですが、本人は自分の言いたいことを呑みこんで、自分の時間や思いを犠牲にし、心労やストレスを溜めることになります。
「上司には逆らえないから…」
「あの人は一方的で…」
と思いながら応じて自分の都合を後回しにしていると、親しい友人や恋人、家族まで巻き添えになってしまいます。
要するに「目の前の相手を大切にしようとするだけでは人間関係はうまくいかない」ということです。
ウオルビーは当初、非主張的な人の自己表現をアサーションで助けようとしているうちに、やがて、非主張的な人たちの自己表現だけを支店しても、人々の人間関係は変わらないことを発見しました。
人々のやり取りには、他者の自己表現を邪魔する人、自己表現を自由にさせない人がいます。
無意識のうちに自分の思いを押し付けたり、相手の自己表現を踏みにじり、自分の思いを通す人たちにも、アサーション(自分も相手も大切にする自己表現)をする必要があるのです。
一方的に我慢することもあきらめることもしない
仕事、上司の命令、先輩の頼み、友人の愚痴など、「他人の都合に従うのは仕方がない」「我慢すべき」と思っていると、強引で、他者のことを大切にしないひとから、引き受けなくてもいいことを押し付けられます。
つまり、相手を大切にしていても、自分をないがしろにしていることになります。
アサーションは、誰もが、いつでも、どこでも実行する必要があることですが、相手や状況によって、アサーションできる時とできない時があるのも確かです。
「仕方がない…」とあきらめてしまうのではなく、アサーションについて知ってみることから、自分と相手を大切にする人間関係が始まります。
お互いの意見で葛藤が生まれた時は、面倒臭がらずにお互いの意見を出しあい、譲ったり譲られたりしながら双方で納得いく結論を出せばいいのです。
アサーションには、歩み寄りの精神があり、お互いを大切にし合ったという気持ちが残ることが大切なのです。
次回、「非主張的な自己表現とは?」、へ続く