日々の生活の中でこんな気持ちになったことはありませんか?
自分が正しいと思うことは、なんと言われても変えられない…
商品を間違えられても、変えてもらうことができない…
自分の意見を通すために、人の気持ちを配慮できない…
このような状況が続くと、心の中に不満が溜まったり、周囲と関係が悪化してしまうなど、結果的にあなたの生活の質を下げてしまいます。
こうしたトラブルを解決し、より爽やかに生きるための方法が「アサーション」です。
お互いにとって心地いい関係を作るために「アサーション」を学んでみませんか?
第21回は、「様々な事例でアサーション⑫ 診察時間が短く、説明がちゃんと聞けない」の続き、「アサーティブになるための5つのヒント」を解説していきます。
目次
アサーティブになるための5つのヒント
アサーティブな表現をしたいと思って、つまづいた時は、スキルだけでなく他の要素を考えてみるとできるようになってきます。
そのための、5つのヒントを参考にしてみてください。
【ヒント1】アサーションする権利を使う
アサーションは、全ての人が生まれながらに持っている基本的人権のひとつです。
例えば、友人から遅い時間に電話で仕事の相談に乗って欲しいと言われたとします。
あなた自身も最近は残業続きで疲れが溜まっていて、今日はたまたま早く帰宅できたので、早めに寝ようとしていたところでした。
とても相談に乗るゆとりはないのですが、このような場合、多くの人は、
どうすればいいだろう…。
というジレンマを体験すると思います。
こうした心の中の葛藤は、自分がしたいことと、他者の希望が一致しない時や、自分の希望と常識が合わない時、しばしば起こります。
このようなジレンマに陥った時、それを解決するには、「アサーションする権利」を確認することが大きな助けになります。
というアサーション権です。
この場合、あなたは
という権利があるのです。
【ヒント2】アサーションでない思い込みを変える
ものの見方や考え方がアサーティブではない時、アサーションができないことがあります。
例えば…、
- 仕事では常に完璧を目指すべきだ
- 物分かりのよい人が好かれる
- 親は子どもより偉い
- 弱音を吐いてはいけない
- 人を傷つけてはいけない
- 上司には絶対に従うべき
- 先生は生徒より優れている
…など、思い当たる項目があり、それを当たり前だと信じていると、非主張的または攻撃的になったりします。
私たちは、多くの常識と言われる考えや思い込みに従って、物事を判断しますが、これらがアサーションを妨げることもあります。
特に、考え方や思い込みが自分の希望や欲求を抑えるように働くと、自己表現を制限して生活を送ることになる可能性があります。
もちろん、文化的・伝統的に大切にしたい考え方、地域にとって多くの人が守っている対人関係の知恵はあると思いますし、全てが悪いわけではありません。
しかし、アサーティブな表現は、それらも含めて自分に合わない考え方や常識に従うのではなく、自分の考えや気持ちを大切にして、正直に相手に言ってみることなのです。
ものの見方や考え方は、人によってさまざまです。
多くの人は、それぞれ自分の体質や気質に合った方法で、物事に対応しているからです。
その点から、率直な自己表現を妨げている思い込みはないか、思い返してみましょう。
【ヒント3】自分の気持ちを把握する
自分の気持ち、言いたい事がはっきりつかめてない時には、うまく自己表現できないものです。
自分の気持ちが一番よく分かっているのは、実は生まれたばかりの赤ちゃんです。
おむつが濡れて気持ちが悪い時、抱っこして欲しい時、気分が悪い時など、泣くことで正直に気持ちを表現しています。
しかし、成長と共に親は子どもの訴えの全てを聞いてくれなくなるし、様々なことを禁止することも増えてきます。
特にしつけ時は、子どもの気持ちを抑えることにもなります。
感情表現を嫌う親に育てられると、子どもは気持ちを抑えることが習慣になり、親に受け入れられるような言動をするようになります。
表現されることのなかった気持ちや考えは意識の底に追いやられて、自分でも自分の気持ちが分からなくなってしまいます。
しかし、胸の奥に眠っている気持ちをつかもうとすれば、だんだんできるようになるのがアサーションなのです。
100%完璧な子育てができる親は、まずいません。
また、自分で自分を育て直すことは、今からでも決して遅くはないのです。
まずは自分の感情を把握する方法を探してみましょう。
【ヒント4】結果や周囲を過度に気にしない
自分の言うことば他者にどのように受け取れられるかを気にしすぎると、アサーションに影響します。
気にしすぎると自分のことが棚上げになるので、表現が不明瞭になるかもしれません。
コミュニケーションは、自分が伝える行為、それを相手が受け取る行為、両方が関わっています。
自分が表現することも、相手の受け取り方も、ある程度各自に任されている、ということです。
相手を大切にする気持ちを持ちつつ、まずは自分ができる範囲で、気持ちを正直に表現することにエネルギーを注ぎましょう。
また、他人や周囲の状況を気にすると、自分の気持ちをおろそかにし、言いたいことが分からなくなってしまうこともあります。
これは相手を立てようとしているのですが、相手の意向や気持ちを伺いながら自分の思いを述べることにもなりかねません。
相手次第で物事が決まっていくこともあり、自分が無視された、軽く見られたというような気持ちにもなります。
そうならないためにも、過度に結果や周囲を気にせず、まず自分の思いを確かめてから表現方法を考えましょう。
特に、非主張的タイプの人は、自分の気持ちを表現するより他者の希望や意向を優先しがちです。
こちらの「非主張的な自己表現とは?」や、「様々な事例でアサーション」などの事例を通して、自分のことを考えてみるのもいいでしょう。
【ヒント5】アサーションのスキルを習得する
多くの人がアサーティブになれないのは、そのスキルを持っていないことが原因です。
対人スキルは主に子ども時代に身につくため、親や周囲の大人の言動が大きく影響します。
しかし、スキルを持たない親や、社会的スキルの訓練に無関心な大人に育てられると、対人スキルが身につきません。
ひとりっ子や友達とあまり遊ばない子どもは、対人関係の機会が少ないため、何気ないやりとりにも苦労してしまいます。
思春期や青年期に、同年代の仲間との付き合いで対人関係のスキルを学ぶチャンスも増えますが、中にはそれを生かせない人もいるでしょう。
対人スキルは、ピアノやゴルフと同じように、訓練して身につくものです。
スキル習得の機会がなかった人は、それを学び、訓練すればいいのです。
大人になると、人はあなたの自己表現のまずさに気がついても、なかなか指摘はしてくれません。
そのまずさを自分で確認するのは大変ですが、スキルがない人自身は、うまくいっていないことに薄々きづいているのではないでしょうか。
具体的で建設的な指摘を得る前に、他者の言動を観察するなど、普段の生活の中にあるスキル向上に役立つものごとを探してみましょう。
まずは、適切なアサーションができている人や、自己表現を真似したい人の言動を観察してみましょう。
それを自分の言動と比べると、どんなスキルがあるのか、どのように表現すればいいのかが分かります。
これが、自分のスキル向上の第一歩になります。
次回、「アサーションは人間の基本的権利!」、へ続く