日々の生活の中でこんな気持ちになったことはありませんか?
自分が正しいと思うことは、なんと言われても変えられない…
商品を間違えられても、変えてもらうことができない…
自分の意見を通すために、人の気持ちを配慮できない…
このような状況が続くと、心の中に不満が溜まったり、周囲と関係が悪化してしまうなど、結果的にあなたの生活の質を下げてしまいます。
こうしたトラブルを解決し、より爽やかに生きるための方法が「アサーション」です。
お互いにとって心地いい関係を作るために「アサーション」を学んでみませんか?
第22回は、「アサーティブになるための5つのヒント」の続き、「アサーションは人間の基本的権利!」を解説していきます。
目次
アサーションは人間の基本的権利!
アサーションは、誰もがやっていいこと。
人間の基本的な権利です。
「権利」というとビックリするかもしれませんが、自分を表現することは誰もがやっていいことであり、基本的な人権の一つなのです。
アサーションに関わる権利を知り、アサーション力を向上させましょう!
アサーション権【1】私たちは、誰もがアサーション権を持っている
アサーションとは、「自分も相手も、それぞれの思いを表現すること」ですが、そのよりどころになっているのは、「自己表現の権利」という、生まれながらにして誰もが持っている基本的人権を認めることにあります。
つまり、アサーションは、誰もが持っているアサーションの権利=「アサーション権」を受け入れるところから始まります。
アサーション権は、人間関係の基礎です。
誰もがやってよい事を知ると、人との信頼、思いやり、親密さなどを育んでいけるようになります。
アサーション権を知り、自分のやっていい事に自信を持つ
例えば…、
- 人から頼まれたことを断る時、罪悪感を感じる
- 相手から大切にされていないと感じる時、自分は劣っていると感じる
- 自分の欲求や希望を伝える時、控え目にすべきだと思う
- 疲れたり落ち込んだり嬉しかったり腹を立てたりした時、それを表現するのはいけないことだと思う
- 失敗してはいけないと思う
あなたはこんなふうに感じていませんか?
もしこのようなことを感じていたとしたら、あなたは生まれながらに持っているアサーション権を、無自覚で「性」「役割」「年齢」「地位」などによる固定化されたイメージで行動しているため、自信がなくなっているのかもしれません。
アサーションは、誰もがアサーションしていいことを知り、それを相互に守り合おうとするところから出発します。
誰にも認められているアサーション権を知り、大切にし、実行することを考えましょう。
アサーション権【2】私たちは、誰からも尊重され、大切にしてもらう権利がある
人間が尊重されるということは、気持ち、考え、意見、価値観も尊重されるということです。
だから私たちは欲求を持ち、それを大切にしてもらいたい、そのように頼んでよいことになります。
また、自分の希望を言ったり、依頼をしてもよく、自分の意見をもって、それを発表してもよいのです。
この権利について、ほとんどの人分かっているものの、なかなか実行できないと思うのではないでしょうか。
例えば、自分が大切にされていないと感じた時、「自分は取るに足らない人間だから」、「自分の意見は大したことがないから」などと思っているとしたら、あなたは基本的人権に則らず、自分で自分の価値を下げていることになります。
つまり、あなた自身があなたを大切にしていないのです。
権利を持つ者同士は歩み寄りも必要
目上の人に対しては控えめであるべき、と思っている人は、自分が目下の場合、自分の欲求や希望を容認するのは開いてであり、相手次第でかなえられたりかなえられなかったりすることになります。
逆に自分が目上の立場の時は、相手の欲求を操作できることにもなります。
「自分の欲求や希望を持つことは許されない」と考える人がいるなら、それを人権の観点から考え直してみてください。
そのような権利が相手に許されているならば、それはあなたにも許されているのです。
大切なのは、「人権はあなたも相手も同様に持っている」ということです。
ただ、お互いに権利を持っているので、当然葛藤が生まれる可能性はあります。
葛藤を恐れすぎると、欲求や希望を述べられなくなってしまいます。
私たちの日常には小さな葛藤やもめ事があるのは当たり前で、お互いに一致することの方が少ないものです。
アサーションは、お互いの希望を述べ合う権利を大切にして、確認しながら歩み寄る方法なのです。
アサーション権【3】私たちは、自分の行動を決める権利がある
あなたには、自分がどう感じ行動するか、その結果、怒ることに対して責任をとる権利があります。
あなたの感じ方や考え方はあなたのものであり、他人と同じものである必要はありませんし、それを主張する権利、変える権利もあるのです。
当然、他者も自分の行動を決める権利を持っているので、あなたが他人を変えることはできません。
例えば、あなたは職場から帰って家族と食事をする約束をしていたところ、同僚から「飲んで帰ろう」と誘われました。
あなたは「約束があるから帰る」と言いましたが、「ちょっとだけ付き合ってよ」と言われたとしたら、あなたならどうしますか?
家族になんて言おうか悩んだり、誘いを断ったら相手が気を悪くするかもしれない、などと考えたりしませんか?
「約束しなければよかった…」と、家族のせいにするかもしれません。
自分で決めたことに責任を持つことで権利を行使しましょう
相手がしつこく誘ったとしても、そうでなくても、「一緒に飲みに行く」と決めたのなら、その行動の責任はあなたが取ればいいのです。
もし自分で決めて行動しておいて、相手のせいだと考えるのなら、それは自分の決定権・判断権を放棄していることになり、自分の決定したことを他者の責任にしようとする「甘えた生き方」だと言えます。
自分で決め、それに対して責任をとることは、他者から押し付けられたものではなく、自分の権利として行使しましょう。
アサーション権【4】私たちは誰でも過ちをおかし、それに責任を持つ権利がある
人間は神様ではないので、時に失敗や過ちをしてしまいます。
ヒューマン・エラー(人為的な失敗)があるからこそ、リスク・マネジメント(リスクを把握し、損失・損害を予防する)があり、失敗をつぐない、解決する方法があるのです。
意図的なルール違反やまやかしと、人間の不完全さから起きる失敗を区別することが大切です。
ルール違反には契約や法に則った罰則がありますが、人間の失敗にはその人ができる償いのチャンスを作ってあげましょう。
急に攻撃されたり、責められたりすると、人は非主張的になった怯えるか、攻撃的になって反撃しがちです。
ヒューマン・エラーを考慮しない罰則や本人を無視した報復は、失敗の防止には役立たないだけでなく、むしろ逆効果。
過ちは、本人に知らされて修復のチャンスを与えられて初めて防止でき、本人が責任をとりたいと思ってこそ、つぐなわれるのです。
失敗する権利があるからこそ、自信が持てる
しかし、不完全な人間には、取れる責任も限られているため、完璧なつぐないができないケースもあります。
失敗したことが後から分かっても、取返しがつくことと、つかないことがあるため、ヒューマン・エラーには、「完璧につぐなう義務はなく、責任をとることができる」と考えるのが現実的です。
失敗しないに越したことはありませんが、失敗してやり直し、修正を加えて成功した経験がある人は、そのことに自信を持っています。
反対に、何度やり直しても成功しなかった人は、自分でできないことがはっきりわかるようになります。
そして、そのことをしない決心をして、断わる自信が持てるようになります。
何度もやり直すことで成功した経験がない人は、なかなか自信をもつことができません。
失敗は人間の権利です。
だからこそ、「失敗は成功の母」と言えるのです。
アサーション権【5】私たちは支払いに見合ったものを得る権利がある
買い物をしたり、サービスを受けたりする時、気づかずに欠陥品を買ってしまったとします。
その欠陥は、取り替えてもらうなど、売った側に責任をとってもらってもいいことです。
しかし、その要求をしたり、要求して葛藤が起こるかもしれないことを避けて、泣き寝入りする人が少なくありません。
病院できちんと診察料を払っていたら自分の要求を言ったり、聞きたいことを聞いたりしてもいいのです。
攻撃的にならず権利を主張する
しかし中には、聞きたいことが聞けず、効果の分からない薬や注射をされてしまう人もいるかと思います。
こんな時、思い出してほしいのが「アサーション権」です。
ただし、この権利を使う時に攻撃的にならないように気を付けましょう。
あなたは自分の支払いに対して見合った対応を要求してもいいのですが、相手にも失敗する権利があります。
この権利をみとめて、相手を尊重した「アサーティブ」な態度で希望を伝えましょう。
相手が拒否する時は、攻撃的にならず、再度アサーティブな要求をしてみましょう。
多くの場合、あなたの要求を分かってもらえるでしょう。
次回、「『常識』とアサーションの関係」、へ続く