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パーソナリティ障害とは?① ~生きずらさの原因は…?10種類のパーソナリティ障害とその特徴~
自分は特別な存在だと思っており、それにふさわしい華やかな成功をいつも夢見ているのが「自己愛性パーソナリティ障害」です。
自己愛が強いため、人間関係で問題を抱えることがしばしばあるようです。
目次
自己愛性パーソナリティ障害とは?
そもそも自己愛とは?
自己愛とは、自分を大切にできる能力のことを言います。
自己愛は、年齢を重ねるごとに成熟していくと言われていて、自分だけでなく、相手にも愛情を与えることができるようになります。
しかし、自己愛性パーソナリティ障害は、自分のことしか見えておらず、相手を思いやることができません。
自己愛が強すぎるために、相手のことが見えておらず、相手も自分と同じように感情を持っている、ということを認めることができないのです。
自己愛性パーソナリティ障害の特徴
自己愛性パーソナリティ障害を一言であらわすと、
自分を過大評価し、賛美されたい欲求が強く、人への共感に乏しい。人を利用したり嫉妬したりする。
となります。
パーソナリティ障害の中で、B群(感情的で移り気、不安定。演技的な行動を取りやすい)に分類されています。
アメリカの精神医学会の診断と統計マニュアル「DSM-5」によると、調査を実施した地域で、0~6.2%の人に特徴がみられ、50~75%が男性だったそうです。
主な特徴は、
- 「自分は特別だ」「自分は何でもできる」と思い、そのような言動をする
- 自分のためなら人を平気で利用する
- 周りの評価にとても敏感で傷つきやすい・怒りやすい
- 相手の気持ちを考えられない
- 協調性に欠ける
- 自分の利益を考えて人と関わる
- 無条件に賞賛されたいと思っている
など。
実際、自己愛性パーソナリティ障害の人は、人並みより優れた才能や能力を持っていることが多いのですが、時にはそれが親譲りのプライドだけだったり、古い家柄だけだったということもあります。
この途方もない特権意識は、現実とは全く釣り合わないほど肥大しているため、さまざまな支障が生じてしまいます。
一方で、非難されることにとても弱いところがあります。
小さな間違いでも、欠点を指摘されることは全てを否定されたのと同じように感じ、怒り出すこともあります。
ただ、その指摘から逃れられないと思った瞬間、全てが台無しになったように感じ、とても落ち込んでしまいます。
一見、自信家に見えますが、わずかな躓きで絶望したり、自殺してしまうなど、非常に脆い一面も持っています。
自己愛性パーソナリティ障害の人は、第一印象ではとても魅力的で交換を持たれることが多いのですが、付き合いが深まるにつれ、身勝手で乱暴な言動があらわれ、驚かされたり、がっかりさせられることも多くあります。
対人関係は、賞賛だけ捧げてくれる人、いろいろな問題の処理を代わって行ってくれる人の2種類を求めます。
前者であるうちは、お客さんとして魅了させられることになりますが、後者の存在になった途端、召使いやお手伝いさんのような扱いに変わってしまいます。
また、存在価値を感じられなくなると容赦なく排除されてしまいます。
周囲の人の内面や尊厳を省みることはほとんどありません。
とにかく自分のことが重要なので、他人の問題はどうでもよく、ある意味、他人は自分の都合や利益のために利用するものだと思っています。
利用価値がなくなれば、つまらないものとして否定するなど、非常に冷酷かつ搾取的な構造がみられます。
また、自己愛性パーソナリティ障害には2つのタイプがあると言われています。
「自分は特別な存在」タイプ
このタイプの人は、自分に特別な才能があると思い、それに伴った発言、行動をとります。
例えば、自分は有名人と知り合いであるなど、自分のことではなくても知り合いである自分はすごいと自慢したりします。
「自分は特別な存在だ」と思いこみが強く、自分のことしか考えられません。
そのため、常に自分が注目の的でありたいと思っています。
自分のためなら人を平気で利用し、裏切ることもあります。
相手の気持ちを考えることが出来ず、傷つけても平気です。
このような言動のため、職場や家庭内で、トラブルが相次いでしまいます。
このタイプが人と仲良くするのは、自分への利益を考えて仲良くしているということが多いです。
ですが、自分の思ったようにいかないと、感情的になり急に怒りだすこともあります。
また、口調が常に攻撃的という特徴もあります。
こういった行動は、自分自身を守るためのものです。
- 他人の反応に気づかない
- 傲慢で攻撃的
- 自分に夢中
- 注目の的でいたがる
- 見かけ上は、他の人に傷つけられたと感じることに鈍感
「理想と現実のギャップに悩む」タイプ
このタイプの人は、かなり高い理想の自分を持っています。
「自分には才能があるんだ!」
と常に思っていますが、現実の自分とのギャップに落ち込んでしまい、自分を責めてしまいます。
また、先ほどの「自分は特別な存在」タイプと違い、内気で注目の的になるのを避ける傾向があります。
さらに、他人の意見や評価にとても敏感で傷つきやすい一面も持っています。
自分の意見や感情もあまり表には出しません。
このタイプの人は、自分に自信がないため、裏腹で自分を誇大化してしまうようです。
- 他人の反応に敏感
- 抑制的、内気、表に立たない
- 自分より他人に注意を向ける
- 注目の的になることを避ける
- 他人の言動に敏感ですぐ落ち込む
- 傷つけられた感じやすい
自己愛性パーソナリティ障害の特徴まとめ
自己愛性パーソナリティ障害の人は、自己愛が強く、相手のことが考えられないため、職場や家庭でしばしばトラブルが発生してしまいます。
また、理想の自分と現実の自分のギャップが激しすぎて落ち込んでしまうこともあります。
しかし、こういった行動は、自分を守るため・自分に自信が持てないために起きてしまうのです。
参考:
パーソナリティ障害 いかに接し、どう克服するか, 岡田尊司, PHP研究所,2004/5/31