突然ですが、あなたにとって「幸せ」とはなんですか?
- お金持ちになること
- 玉の輿にのること
- 幸せな結婚をして子供を育てること
- 大きな会社に入って安定した職があること
- 商売やスポーツで大成功して有名になること
これらの目的は達成すると嬉しいものです。
しかし、「自己肯定感」が低いと、これらの目的を達成しても幸せを感じられません。
一次的には嬉しいかもしれませんが、喜びが長続きしないのです。
「自己肯定感を高めて人生をもっと楽に!」では、自己肯定感とうまく付き合う方法を身につけ、幸せな毎日を過ごすための方法をご紹介していきます。
第12回は、「【自尊感情】…また失敗するかも…のトラウマを書き換えるには」の続き、「【自己受容感】…ありのままの自分を認める感覚」を解説していきます。
【自己受容感】…ありのままの自分を認める感覚
禅の言葉の一つに、
があります。
ここでいう、「八風」とは、心の中に吹く風であるとされています。
八風は4つに分けられ、こういう風が吹いたらいいな、という煩悩を「四順」といいます。
- 利(りこ):自己の利欲に囚われ、自分だけはと願う心。
- 誉(ほまれ):名聞名誉にこだわり、誉められたいと願う心。
- 称(たたえ):人々から称賛されたいと願う心。
- 楽(たのしみ):享楽にふけり、楽をしたいと願う心。
そして、こういう風は吹かないでくれ、と願う煩悩を「四違(しい)」と言います。
- 衰(おとろえ):気力、活力の衰え、人生の衰えた姿。
- 毀(けなし):他人から批判され、けなされる姿。
- 譏(そしり):他の人から、そしられる姿。
- 苦(くるしみ):人生の苦難、苦境にさらされる姿。
「八風吹けども動ぜず、天辺の月」は、こうした風に吹かれても空に浮かぶ月のように動じないこころをもちましょう、という教えで、この弾語は、自己受容感が高まった状態を言い表しています。
自己受容感は、自分のポジティブな面もネガディブな面も、あるがままに認められる感覚。
人を恨んだり妬んだり、失敗して落ち込んだり、将来が不安になっても、その自分を丸ごと受け止めて、それでも、「大丈夫、必ずなんとかなる」と、人生を肯定できる力です。
人間は、完璧・完全にはなれません。
不完全、つまり良い自分・好きな自分、悪い自分・嫌いな自分、どちらもあるから素晴らしく、人生とはそれでいい、ということです。
完璧を目指せば、無理をするだけで自分を追い込んでしまい、幸せは逃げていきます。
まずは、完璧になれないとい知り、不完全な自分を受け入れ、その中から肯定的な側面を見い出します。
自己肯定感の木で言うと、自己受容感は幹の部分です。
自分らしくしなやかに生きるためには不可欠な感覚で、自己肯定感を高めるために大きな役割を担っているためです。
どんな自分にも「OK」を出せる人は、何が起きてもしっかりと地に足をつけて、どんな風が吹いてもしなやかにしなる強さ、元に立ち直る回復力を持っています。
折れない心=レジリエンスが高まる、というわけです。
自己受容ができている人は、さまざまな経験を乗り越えられ、共感力が磨かれ、信頼され、愛される存在になります。
一方、自己受容感が低下していると、小さなミスが気になり、行動に移すことができなくなります。
いつも
自分のネガディブな面に対して執着するようになり、自己否定的になることで、他の人からの評価が気になって仕方がない状態になります。
他者依存の傾向が強くなるため、人の意見にも振り回され、人間関係にも悩み、いつも風見鶏のようになった結果、周囲の人からも信頼されなくなってしまいます。
では、自己受容感を定価させてしまった人の事例を紹介します。
【事例1】嫌われたらどうしよう…といつも思ってしまう
Tさんは「仲間外れにされた原因は自分にある」と思いこんで、自己受容感を傷つけたまま大人になっていました。
主な悩みは、会社での人間関係で、特に女性同士のグループに馴染めず、「離席している間に悪口を言われるのではないか?」と不安になり、トイレにもなかなか行けないそうです。
また、「子どものお迎えのために早く帰りたいが、職場の雰囲気を壊し、悪口を言われるのではないか」と心配で怖いそうです…。
それが起きた時どうするか、予め決めておく
Tさんのように、子どもの頃からの無視や仲間外れといったいじめ体験が自己受容感を傷つけ、その負の感情を抱えたまま大人になる人は少なくありません。
いじめた側に問題があるはずなのに、「自分にも問題があったのでは」と思い込み、自分のパーソナリティを尊重できない状態になってしまいます。
結果、
「嫌われないように過度に気をつかう」
などの対人関係の悩みを抱えてしまいます。
拒絶される恐れ、攻撃されることへの恐怖心が強く出てしまうのです。
このようなケースで必要なのは、状況を客観視することと、不安に対処することです。
そのための手法として、Tさんは「if-then プランニング」をカウンセリングですすめられました。
「if-then プランニング」は、その名の通り、
と、前もって決めておく事で、状況を客観視して、不安から行動を躊躇してしまう自分の背中を押す、というテクニックです。
自己肯定感が低い時は、ネガディブな事を受け入れることができず、拒絶への恐怖をいつも以上に強く感じてしまい、その原因となっている過去の思い込みも強化されてしまいます。
そうした自動思考の流れを断ち切るために、「嫌われるかも」「悪口を言われるかも」と思った時に備えて、事前に「こういう行動をとりましょう」と決めておきます。
「if-then プランニング」は、心理学、脳科学など多くの学術研究で効果が実証されており、人間は予め「Aという状況になった時には、Bをしよう」と決めておくだけで、行動に移しやすくなることが分かっています。
Tさんの場合、もし、
「言われたとしても私の価値は変わらないんだと小さくつぶやく(then)」
こうすることで、「嫌われたらどうしよう」という自動思考を止めました。
周囲を変えようとするのでもなく、「悪口を言われるかもしれない」という不安感を消すわけでもなく、仮にそうなっても大丈夫だというメッセージを自分自身に発することで自己受容感を高めたのです。
他人を変える事はできませんが、自分を変えることはできます。
自分が変わることで、「自分を嫌う」と思っていた他人が、「別に嫌ってはいない」他人へと変わるのです。
こうしてTさんは、職場の人間関係を自ら変えていくことができたのです。
次回、「【自己受容感】…仕事の失敗を押しつけられた過去が忘れられない」へ続く