解離性障害は、自分が自分であるという感覚がない状態のことです。
“自分”の感覚がないとき、一時的、または長期的に記憶がなくなってしまうことがあります。
前回は、解離性障害の7つの症状をまとめました。
前回の記事↓
解離性障害とは?① ~自分のことなのに記憶がない…自分の感覚がなくなる解離性障害、その症状と特徴~
症状の程度にもそれぞれ幅がありました。
今回は、「解離性障害の原因」を詳しくみていきます。
目次
解離性障害の原因は?
解離性障害の原因として、明確になっているものは今のところありません。
いくつかの要因が重なり合って、解離性障害が引き起こされると考えられています。
家庭内外傷と家庭外外傷
解離のある人は、心に深い傷を抱えています。
原因となる出来事はさまざまで、家庭の中で起こる「家庭内外傷」と家族以外の人間による「家庭外外傷」に分けることができます。
本人が傷を自覚していない場合もあります。
家庭内外傷
離性障害を発症する人の多くは、幼少期に強いストレスを受けていたと言われています。
- 親からの虐待
…暴力や体罰、育児放棄などで近年増加している。家庭内の虐待は周囲が気づきにくく、対策が遅れがちで長期間持続することが多い。 - 親の不仲・離婚
…家族と別居したり親戚に預けられたりすると、子どもは自分が安心できる場所を失い、疎外感や孤立感につながる。 - 居場所がない
…両親が不仲になったり、夫婦喧嘩が絶えないと、子どもは安心して過ごせる場所を失うかもしれないと不安を感じる。 - 性的外傷体験
…性的外傷体験は、解離性障害全体の約45%にみられる。そのうち、家庭内は33%。
家庭外外傷
家庭外外傷では、レイプなどの性的外傷体験が代表的です。
- 性的外傷体験
…性的外傷体験は、解離性障害の約45%に見られ、そのうち家庭外は77%。 - 交通事故・災害・死別
…交通事故による外傷体験が引き金になるものは、全体の約20%と意外に多い。自然災害や暴行・死別などは、原因にならないとは言えないが数は少ない。 - いじめ
…解離のある人の55%に学校での持続的ないじめを受けた経験がある。しかし解離性障害との関係はそれほど強くない。
このように、精神的に耐え難く、ストレスとなるような体験があると、その経験を自分から切り離して考えるようになることがあります。
心を飛ばしてやり過ごす
解離性障害の人は、耐え難い苦痛や葛藤から自分を守ろうとするために起こると言われています。
その方法が、切り離した心を飛ばすことです。
虐待された時、自分の体から意識を飛ばし、虐待されている自分を離れた場所から見ているような状態を作り出し、苦痛から逃れます。
心を飛ばして、やり過ごすしか苦痛に押しつぶされそうな自分を救う方法がなかったため、その結果、心が解離し、解離性障害が発症したと考えられています。
どこにも居場所がない
なんらかの外傷体験があったとしても、全ての人が解離性障害を発症するとは限りません。
重要なのは、傷を癒せる場所があるかどうか、です。
外傷体験があっても、安心して傷を癒せる場所があれば深刻な事態をさけられたかもしれませんが、外傷体験の多くを、家や学校など本来、安心できる場所で受けているため、居場所を失い、傷が癒されないままになってしまっています。
他人に合わせすぎて自分を見失う
解離がある人は、「いつも相手に合わせようとしていた」という人が多くみられます。
これを「過剰同調性」と言い、「相手を怒らせたくない」「相手に嫌われるのではないか」という、他者への不安や不信、おびえがあります。
虐待やいじめなどを受けるとより顕著になります。
抵抗や反撃ができず、ひたすら相手に合わせますが、そうした行動は本心ではありません。
空気を読んで、周囲に合わせようとしていると、結果的に「自分がどうしたいのか、どういう存在かわからない」という感覚を抱えこんでしまいます。
解離性障害の原因まとめ
解離性障害が発症する原因はさまざまありますが、幼少期のストレスが大きく関係しているようです。
虐待や暴行などの辛い出来事から心を飛ばし、苦痛から逃れることで自分の身を守ろうとします。
そのため、その部分の記憶が抜け落ちて空白ができてしまうと考えられています。
参考:
解離性障害のことがよくわかる本 影の気配におびえる病(健康ライブラリーイラスト版)Kindle版, 柴山雅俊,講談社, 2012/5/16