今回は、摂食障害の一つ、「過食症」について詳しくみていきます。
前回の記事↓
摂食障害とは?① ~約90%が女性!?摂食障害の概要となりやすい人まとめ~
摂食障害とは?② ~治療には周りの人も支えた大切!摂食障害の治療法~
目次
過食症とは?
過食症とは、
短時間に大量の食べものを次から次へと食べ続け、そのあと太ることを恐れて食べ過ぎた分を、嘔吐、排せつ、絶食、運動などを行う精神疾患のひとつ。
過食症は、ストレスや環境変化により食欲をコントロールできず、たくさん食べすぎてしまう病気です。
食べている間は自分をコントロールすることができません。
また、「ダイエットしていたのに過食症になってしまった」というケースも多くあります。
過食症はストレスが原因で起こることも多く、また、逆に過食によるストレスから精神障害を引き起こすケースも多くあります。
過食症の症状には、2つのパターンがあります。
- ひたすら食べ続けてしまうタイプ
- 食べては嘔吐を繰り返すタイプ
「ひたすら食べ続けてしまう」タイプは、カロリー過多で肥満になり、周囲の人が気づくことができますが、「食べては嘔吐を繰り返す」タイプは、見た目からは分かりにくいため、周囲から気づかれないことがあります。
ひたすら食べ続けてしまうタイプ(過食性障害)
食欲をコントロールできず、短時間で大量の食品を食べ、あまり時間をおかずにまた過食するというサイクルを繰り返します。
そのため、精神的・肉体的にストレスがかかり、より過食がエスカレートしてしまう悪循環に陥ってしまいます。
もちろん、食べた分だけカロリーも蓄積されてしまうため、肥満になり、周囲の人も比較的気づきやすいのが特徴です。
このタイプの人は、ほぼ半数が男性です。
また、以下のような行動がみられます。
- 普通の人より食べるペースがかなり速い
- 食べ過ぎて気持ちが悪くなるまで食べ続ける
- 空腹を感じなくても大量に食べる
- 恥ずかしさから一人で食事をとろうとする
- 過食した後、自己嫌悪、落ち込み、罪悪感を抱く
このタイプの人は、減量の意思に反して過食してしまう自分の行為に悩んでいるため、抑うつや不安が生じる可能性が高くなります。
食べては嘔吐を繰り返すタイプ(神経性過食症)
食べた後に、「なんでこんなに食べてしまったのか・・・」と自己嫌悪に陥り、その解決法として口に指を入れて嘔吐することによって、食べた過ぎたことを「なかったこと」にしようとします。
そして、次第に「吐く」という行為に体が慣れてきて、習慣化してきます。
「たくさん食べても後で吐けばいいや」と安心してしまい、どんどんエスカレートすることもあります。
また、以下のような行動がみられます。
- アイスクリームやケーキなど脂肪分を多く含む甘い食べ物を食べる傾向がある
- 一日に複数回にわたり過食することがある
- 意図的に嘔吐したり、下剤や利尿剤を服用する
- 徹底的にダイエット、または絶食することがある
- 極端に運動することがある
- 指を使って意図的に嘔吐するため、指の関節に傷あと(吐きだこ)ができる
このタイプの人の体重は、正常体重付近を上下するため、過体重や肥満の人はごく少数です。
意図的に嘔吐するため、歯のエナメル質が溶けたり、頬の唾液腺が腫れる、食道の炎症などが起きます。
過食症になると…
食欲をコントロールできなくなる
短時間に大量のものを口にするという行為を繰り返します。
特に強いストレスを感じると、夜に過食に走ってしまい、家中のものを食べつくしてしまうこともあります。
嘔吐・下痢を繰り返すようになる
過食後に無理やり嘔吐をしたり、下剤などを使って食べたものを体の外に出そうとします。
最初は苦しいと感じる嘔吐や下痢も、だんだんと体が慣れてしまい、他の合併症が現れるようになります。
他にも健康に悪影響が…
カロリーの高いものをたくさん取ってしまう傾向にあるので、コレステロール値や中性脂肪が高くなり、高血圧や心筋梗塞、糖尿病など健康に様々な悪影響があります。
嘔吐を繰り返すことによって逆流した胃酸が、歯を溶かしたり、虫歯の原因になってしまいます。
腸の機能が低下するなどの症状もあります。
さらに嘔吐を繰り返すことにより強い栄養失調になると、鉄分が足りなくて貧血を起こしたり、髪の毛が急激に抜けたりもします。口内炎や肌あれの原因にもなります。
精神にも影響が…
わかっていても過食を繰り返してしまうため、激しい自己嫌悪におちいってしまい、精神が不安定になり、うつ病など、精神疾患を患う場合もあります。
抑うつ状態が続き、自殺に至ることもあります。
過食症の原因は?
主にストレスが原因と言われています。
職場や学校での人間関係、家族関係、家庭環境、いじめ、失恋、受験の失敗、親のプレッシャーなど要因は様々です。
また、無理なダイエットも原因のひとつです。
無理なダイエットをすることがストレスになり、過食に繋がってしまうためです。
過食症に効果的な治療法は?
認知行動療法と対人関係療法、この2つが過食症の治療に効果的だと言われています。
認知行動療法
認知行動療法とは、自分の偏った考え方がどのように過食に繋がっているのかを分析して、客観的にみることができるようにしていくというものです。
例えば、食生活の記録を毎日日記につけるのも効果的ですが、人によって向き不向きがはっきり分かれます。
対人関係療法
過食症の原因が、対人関係の問題から発生していることが多いため、どのような対人関係やパターンが自分の過食に繋がっているのか、まずはそこから分析していきます。
対人関係の問題が解決して、自信がついてくると次第に過食症状が治まってくる、といったもの。
直接、過食という症状には手をつけません。
その他の治療法
- 精神刺激薬
…ADHDの治療に使われるものや、選択的セロトニン再取込み阻害薬(抗うつ薬の一種)が、過食と嘔吐の頻度を減らすことがありますが、長期的な効果は不明です。 - 減量薬
…オルスリタットやトピラマートなどの食欲抑制薬が減量に役立つことがあります。 - 外科手術
…重度の肥満の治療として手術が行われることもあります。
治療を受けないとどうなる?
過食症を含む、摂食障害は放っていては治らず、むしろ悪化してしまいます。
しかし、正しい知識を自分と周囲の人が持っているだけで、かなり改善する病気ともいえます。
例えば、今まで嫌いだった自分に少しずつ自信が持てるようになると、過食の症状は改善に向かうと言われています。
ダイエットをしていたのに、そのストレスや反動で過食症になってしまうことも意外と多いのです。
過度なダイエットには十分に注意しましょう。
また、自分にあったストレス解消法を見つけていくよう模索していくことも大切です。
参考:
MSDマニュアル家庭版,神経性過食症, Evelyn Attia, B. Timothy Walsh, 2018年 7月
MSDマニュアル家庭版,過食性障害, Evelyn Attia, B. Timothy Walsh, 2018年 7月