自分が「幽体離脱をしている」と感じたことはありますか?
この「幽体離脱をしている」という感覚がいつも続く…そんな症状を「離人症性障害」といいます。
離人性障害は、解離性障害のひとつに分類されています。
前回までの記事↓
解離性障害とは?① ~自分のことなのに記憶がない…自分の感覚がなくなる解離性障害、その症状と特徴~
解離性障害とは?② ~過去のつらい経験が発症の引き金に…解離性障害の原因~
解離性障害とは?③ ~回復には長い期間が必要…解離性障害の治療法~
目次
離人症性障害とは?
離人症性障害とは、
自分が、自分の身体や精神から抜け出しているように感じ、遠くから自分自身を観察しているような感覚が持続的または反復的にある病気のこと。
例えば、何か行動をしていても、「行動している自分」と「それを外から見ている自分」というふうに、自分が分裂しています。
一般に10代後半から20代に発症することが多く、男性より女性に多くみられます。
離人症性障害の症状は?
- 喜怒哀楽の感情が無くなる
- 何を食べても味がしない
- 周りの世界が偽物のように感じる
- 夢の中にいるように感じる
- 自分がロボットのように感じる
- 自分の体の大きさや形が違って感じる
- 見たことがない光景を見たことがあると感じる(デジャブ)。または見たことがある光景を見たことがないと感じる(ジャメヴ)
このように、自分が自分でないように感じたり、すべて他人事のように感じてしまうのが特徴です。
また、自分と世界の間にベールがあり、世界がぼやけている、と感じることもあるようです。
離人症性障害の原因は?
離人症性障害の原因は、精神的な強いストレスや疲労、不安や欲求不満などが考えられています。
- 子どもの頃に的虐待やネグレクトを受けた
- ドメスティックバイオレンスを目撃した
- 親に重い身体または精神障害がある
- 愛する人が突然亡くなった
など。
不安障害、うつ病性障害、統合失調症、気分障害などの精神障害と併存して現れる場合もあります。
また、離人感はアルコールや違法薬物によっても生じることがあります。
しかし、25~50%の症例では、ストレスが比較的軽微なものであるか、ストレスを特定することができません。
離人症性障害の原因としては、今のところ系統的なデータがなく、不明確なことも多いため、明確な発病の原因はわかっていません。
離人症性障害の治療法は?
離人症性障害の明確な原因はまだわかっていないため、効果的な治療法もはっきりとしていません。
また、離人感は治療をしなくても自然に消失することもあります。
そのため、治療は症状が持続しているか再発を繰り返す場合、苦痛を伴っている場合に行います。
薬物療法の効果は、はっきりとわかっていませんが、不安やうつ病が離人症状に関係していたり、引き金になったりする場合もあるため、本人が不安を感じているようであれば抗不安薬や、併存している病気に対しての薬は効果的です。
一部の人には、認知行動療法などの精神療法に効果があると言われています。
また、離人症性障害はストレスに関連して現れることが多いと考えられているため、カウンセリングでストレスの原因を明らかにしたり、認知行動療法などで自分と向き合っていくことが大切です。
そして、これから何をしていけばいいかを前向きに考えて、ストレスや不安に対する自分の対処方法を見つけていきます。
家族関係、夫婦関係のあり方も一緒に考えていくとより効果的です。
離人症性障害まとめ
離人症性障害とは、自分が自分でないと感じてしまう病気です。
原因ははっきりとわかっていませんが、強いストレスや不安などが関連していると考えられます。
そのため、カウンセリングなどで自分自身と向き合っていくことが大切です。
焦らずに治療を続けていきましょう。
参考:
MSDマニュアル家庭版,離人感・現実感喪失症, David Spiegel, 2017年 7月