うつ病になる人は年々増えていると言われており、厚生労労働省の調査では、日本の潜在的なうつ病患者の人数は600万人を超えると言われています。
うつ病患者の中でも、最近増え始めていると言われているのが「非定型うつ病」と呼ばれるニュータイプのうつ病です。
「非定型うつ病ってどんな病気?」では、専門家でも理解が不十分とも言われている「非定型うつ病」とは、どんな病気なのか?その症状や治療法などを紹介していきます。
第10回は、「非定型うつ病の症状 ⑥ 怒り発作」の続き、「非定型うつ病の症状 ⑦ フラッシュバック」をみていきます。
目次
非定型うつ病の症状 ⑦ フラッシュバックあ
昔のことを思い出し感情がコントロール不能に
非定型うつ病の人は、不安・抑うつ発作を起こしている時に、時々「フラッシュバック」を体験する人がいます。
これは病気のために感情が過敏になることにより出現してくると考えられています。
過去で思い出されるのは、記憶を支配する海馬や偏桃体という脳の部位が、情動の働きと深い関わりがあるためです。
フラッシュバックが起こると、過去のできごとともに、その時の悲しみや怒り、つらい感情がふくれあがり、コントロールできなくなってしまいます。
非定型うつ病が「情動の病」と言われるのはこのためです。
昔のことを何度も思い出す
非定型うつ病の人のフラッシュバックは、過去の「喜怒哀楽」な出来事を、自分の意思に反して何度も思い出し、その出来事にとらわれます。
過去の出来事に対して「あの時、ああ言えばよかった」「こうすればよかった」と思い悩んだり、将来どうなるのか、考えても仕方がないことに対して不安を抱いたりします。
過去と将来のことで頭がいっぱいになってしまい、現在なにをすべきなのか、正しく判断することができなくなります。
さらに、過去と現在を混同してしまう例もあり、何十年も前のことを今精算しようとして、実際に行動を起こすひともまれに存在します。
PTSDのフラッシュバックとの違い
PTSD(心的外傷後ストレス障害)でもフラッシュバックが起こりますが、非定型うつ病のフラッシュバックとは、いくつか違いがあります。
PTSDは、死の危機が迫るような事故や事件で受けた心の傷が、いつまでも残り(トラウマ)、1か月以上経っても続き、生活に支障が出ている状態をいいます。
フラッシュバックが起こると、タイムスリップしたように、痛み、匂いなどの体験がリアルによみがえり、まるで今現実に起こっているような感覚に襲われます。
当然のことながら、それに伴う感情も非常に苦しいものになります。
また、PTSDの場合、脳の海馬という部位が障害をうけていることが分かっています。
一方、非定型うつ病のフラッシュバックは、本人にとってつらい体験ではあるものの、それほど強烈な体験ではなく、親に叱られた、同級生からバカにされた、みんなの前で恥をかいた、失恋した、彼から暴力を受けた、といった記憶です。
もちろん本人にとってはとてもつらい記憶ですが、PTSDのような激烈なものではなく、日常的に多くの人が体験する出来事です。
ただ、フラッシュバックがみられるということは、非定型うつ病とPTSDには類似した一面があるということを物語っています。
非定型うつ病の患者さんは、定型うつ病の人に比べて、幼少時代の心的外傷体験がずっと多いことが報告されています。
次回、「なぜ非定型うつ病になってしまうのか?」へ続く