うつ病になる人は年々増えていると言われており、厚生労労働省の調査では、日本の潜在的なうつ病患者の人数は600万人を超えると言われています。
うつ病患者の中でも、最近増え始めていると言われているのが「非定型うつ病」と呼ばれるニュータイプのうつ病です。
「非定型うつ病ってどんな病気?」では、専門家でも理解が不十分とも言われている「非定型うつ病」とは、どんな病気なのか?その症状や治療法などを紹介していきます。
第14回は、「脳内の変化とうつ病 ① 神経伝達物質の働き」の続き、「脳内の変化とうつ病 ② 血流の悪化や機能の低下」をみていきます。
脳内の変化とうつ病 ② 血流の悪化や機能の低下
ホルモンの分泌や血流を調べて、脳が機能しているかどうかを調べてみると、非定型うつ病では、視床下部や海馬、前頭葉、扁桃体などが不調を起こしていることが推測されています。
ストレス中枢の視床下部にトラブル
私たちの体には、外からの変化や刺激に対し、体内の状態を一定に保とうとする「恒常性(ホメオスタシス)」という仕組みが備わっていて、ストレスを受けた時もこの仕組みが働きます。
ホメオスタシスを担っているのは、神経系と内分泌(ホルモン)系で、中枢は脳の視床下部にあります。
視床下部は、ストレスをキャッチするとホルモン分泌を指示したり、自律神経に働きかけて心身の健康をコントロールする総司令部です。
そこで、視床下部、下垂体、副腎皮質からなる内分泌系が出しているホルモンの濃度を調べ、脳のストレス反応をみてみると、定型うつ病と非定型うつ病では異なる結果が出ました。
例えば、コルチゾール(副腎皮質ホルモン)や副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)が、定型うつ病では増える(ストレス反応をする)のですが、非定型うつ病では増えません(ストレス反応をしない)。
つまり、非定型うつ病で、視床下部になんらかの機能異常をきたしていると考えられるのです。
海馬、前頭葉、扁桃体の活力低下や委縮
激しいストレスが加わると、副腎皮質ホルモンが増えて、脳神経にいく栄養が抑えられ、その結果、情動や記憶にかかわる海馬の神経細胞が委縮していく、と考えられています。
幼少期に激しいストレスを受けたうつ病患者は、健常な人だけでなく、一般的なうつ病の人と比べても海馬が委縮している、という報告もあります。
また、非定型うつ病の人の前頭葉の血流を測定すると、明らかに血流量が少ないことが画面にあらわれます。
前頭葉は、私たちが精神活動を行うための中核となるところですが、ここの活動力が低下してしまうわけです。
さらに非定型うつ病のでは、感情や知覚を理解して分析する扁桃体の機能も低下すると考えられています。
次回、「遺伝の影響度合い」へ続く