うつ病になる人は年々増えていると言われており、厚生労労働省の調査では、日本の潜在的なうつ病患者の人数は600万人を超えると言われています。
うつ病患者の中でも、最近増え始めていると言われているのが「非定型うつ病」と呼ばれるニュータイプのうつ病です。
「非定型うつ病ってどんな病気?」では、専門家でも理解が不十分とも言われている「非定型うつ病」とは、どんな病気なのか?その症状や治療法などを紹介していきます。
第17回は、「現代の社会環境が非定型うつ病の原因?」の続き、「体を使わないと心も不調になる」をみていきます。
体を使わないと心も不調になる
心と体が連動していることは、脳の働きをみればわかります。
心と体のバランスをうよく使うことが、脳の健康のためには大切なのです。
また、運動不足は、うつ病発症のリスク因子にもなります。
悩んでいる脳は、体を動かすことで調整
うつ病は心の病気なので、体を使うこととどんな関係があるのかと不思議に思われる方もいるかと思います。
では、心とは何なのでしょうか。
医学的には、心は「脳の機能」のひとつと言えます。
脳の機能としては、他に、目・鼻・下・耳・皮膚の感覚で、心臓や胃などの内臓を働かせる、暑さ・寒さの対応調節をする、歩いたり走ったりするために筋肉を動かす、などの機能があります。
人間の生命活動は脳が連動しているわけです。
悩みや不安で頭(脳)をいっぱいにして、体を動かすことを疎かにすると、脳はますます不健康になります。
このような状態を解消するためには、体を動かして、脳のさまざまな機能をバランスよく使うことが大切です。
うつ病などの精神疾患は、薬だけの治療を受けている人と、エクササイズを取り入れて治療している人とでは、後者の方が治りが早く、完全に治る確率が高いという報告もあります。
運動不足の子どもは、うつ病予備軍?
近年、子どもたちの基礎的な体力や運動能力が、長期に渡って低下し続けています。
文部科学省が発表した「平成19年度と昭和60年度との体格および体力の比較」では、男女ともに体格はよくなっているものの、体力は落ちていることが分かります。
また、中学生の持久走の結果から、体力の基本とされる持久走の結果からは、体力の基本とされる持久力の低下も明らかに。
持久力は、運動をすればすぐに上がりますが、車社会が発達し、今は地方の子どもでも、長い距離を歩いたり、野山を駆け巡ったりすることが少なくなっているようです。
運動不足になる理由としては、
- テレビゲームなど、家にこもる遊びが増えて外で遊ぶことが少ない
- 生活が便利になり、家事の手伝いなどで体を動かすことが少ない
- 勉強・塾で忙しく、外遊びする時間がない
- 親の夜型生活習慣が、悪影響を与えている
などが指摘されています。
子ども時代は活発に動くことで、成長ホルモンの量が増え、海馬の神経細胞の新生も促されます。
逆に、動かないと前頭葉がうまく育たず、キレやすくなるという報告もあります。
体を動かさないと、自立神経も上手く育ちません。
昼は交感神経を働かせて、夜は副交感神経の働きでぐっすり眠る。
人間の自律神経は、そうやって発達していくのですが、うまく切替ができない子どもが目立ってきています。
脳を休めるためにとても重要な「睡眠のリズム」が乱れると、うつ病のリスクを高めます。
現在生活は、大人だけではなく、子どもたちの「うつ病予備群」をも作ってしまうといえるでしょう。
次回、「非定型うつ病の患者像」へ続く