うつ病になる人は年々増えていると言われており、厚生労労働省の調査では、日本の潜在的なうつ病患者の人数は600万人を超えると言われています。
うつ病患者の中でも、最近増え始めていると言われているのが「非定型うつ病」と呼ばれるニュータイプのうつ病です。
「非定型うつ病ってどんな病気?」では、専門家でも理解が不十分とも言われている「非定型うつ病」とは、どんな病気なのか?その症状や治療法などを紹介していきます。
第20回は、「非定型うつ病と関わりが深い病気 “不安症”」の続き、「非定型うつ病と併発しやすい“不安症”」をみていきます。
非定型うつ病と併発しやすい“不安症”
限局性恐怖症は併発する不安症のトップ
うつ病は、他の精神疾患を併発することが多い病気です。
精神医学では、これをコモビディティ(comorbidity=併存)といい、近年注目されています。
併発といっても、お互い病気が全く無関係に存在するのではなく、なんらかの関係がある場合をコモビディティといいます。
うつ病の中でも、非定型うつ病は、他のうつ病に比べて、このコモビディティの頻度が高い病気です。
非定型うつ病に併発する病気は、どんな病気が多いのでしょうか。
以下のグラフを参照ください、
図1:うつ病を併発する病気(疫学調査)
図2:うつ病を併発する病気(臨床調査)
図1は、疫学調査によるデータ、図2は、実際の臨床現場による調査データです。
どちらも似通っていて、不安症の病気が多くみられます。
非定型うつ病に併発する不安症で、もっとも多いのが「限局性恐怖症」です。
これは、その人にとって恐いと思う物事や状況に過剰な恐怖心を抱き、回避しようとする病気です。
限局性恐怖症は、恐怖対象と直面しない限り苦痛は少ないため、これだけで医療機関を受診しようとする人はあまりいません。
ただ、限局性恐怖症をもつ人は、非定型うつ病だけでなく、他の不安症(パニック障害、社交不安症)も併発しやすく、そこで受診するケースが多くみられます。
社交不安症、パニック症の併発も多い
非定型うつ病に併発する不安症で、2番目に多いのが「社交不安症」です。
これは、かつて対人恐怖症と呼ばれていた病気で、自分の容姿や能力が、他人から低く評価されるのではないかという恐れが心の底にあり、人前に出ると強く緊張したり、あがったり、視線が気になって、うまく行動できなくなってしまいます。
社交不安症が非定型うつ病を併発する割合は、疫学調査データでは29%、臨床データでは40%と、高い率のなっています。
社交不安症も、自分では気づいていない場合が多く、うつ病を発症して受診し、そこで社交不安症を指摘されるケースが多いようです。
さらに、「パニック症」も、非定型うつ病を高率で併発します。
パニック症は、不安症の代表的な病気です。
パニック症の人の生涯をみると、約60%が非定型うつ病を伴っています。
また、うつ病を併発するパニック症は、不安や恐怖のレベルが高く、罹病機関が長い重症例が多いと言われています。
このように、不安症は非定型うつ病と併発することがとても多いのですが、全ての不安症(パニック症を除く)は、非定型うつ病があらわれる前に発症しています。
前回でも触れたように、不安症は年代によってあらわれやすい病気がありますが、非定型うつ病はこれらを土台にして併発します。
次回、「パニック症とはどんな病気か」へ続く