うつ病になる人は年々増えていると言われており、厚生労労働省の調査では、日本の潜在的なうつ病患者の人数は600万人を超えると言われています。
うつ病患者の中でも、最近増え始めていると言われているのが「非定型うつ病」と呼ばれるニュータイプのうつ病です。
「非定型うつ病ってどんな病気?」では、専門家でも理解が不十分とも言われている「非定型うつ病」とは、どんな病気なのか?その症状や治療法などを紹介していきます。
第22回は、「パニック症とはどんな病気か」の続き、「パニック発作で起こること」をみていきます。
目次
パニック発作で起こること
心臓がドキドキしたり、呼吸困難になったり、不安や恐怖で失神しそうになったり…。
パニック発作の苦しさは周囲には分かりにくいものです。
患者さんの中では、いったい何が起きているのでしょうか?
激しい動悸や呼吸困難、死を意識するほどの恐怖…
パニック発作は、パニック症の中心的な症状で、強い不安症状が急激にあらわれた状態をいいます。
発作では、不安、恐怖といった「精神症状」に加え、動悸、めまい、呼吸困難など、多彩な「身体症状(自立神経症状)」があらわれます。
しかし、本人の強い恐ろしさは、周囲には分かりづらいものです。
患者さんはその時、どう感じているのか?
次から、患者さん本人の表現を交えてご紹介します。
発作のあらわれ方
直接的な原因は何もなく、不意に始まり、数分以内でピークに達します。
本人はワケがわからないまま強い不安に襲われ、
「死んでしまうのではないか」
という恐怖を覚えますが、ほとんどの場合、30分前後でおさまり、何事もなかったように元の状態に戻ります。
心臓がドキドキする
いわゆる「動悸」ですが、実際に発作を体験した人によると「心臓がドキドキする」といった生易しいものではないようです。
- 心臓が破裂する
- 口から心臓が飛び出しそうになる
- 心臓をわしづかみにされる
など、激しい言葉で表現されます。
冷や汗をかく(身体症状)
暑さではなく、恐怖や不安からくる発汗。
冷や汗をかくことでさらに不吉な感覚が生まれ、恐怖心や不安感が強まります。
手足・体の震え(身体症状)
筋肉が収縮して、自分の意思とはかかわりなく震える現象。
まるで痙攣するように、体がガクガクと動き出す人もいます。
口が乾く(身体症状)
喉がカラカラになったり、口の中がザラザラ、もしくはヒリヒリと乾く状態。
息苦しさを伴うこともあります。
息苦しくなる(胸部の症状)
ハーハ―と呼吸が速くなったり、荒くなったりして息をするのが困難な状態。
息の吸い方や吐き方が分からなくなる人もいます。
窒息する感じ(胸部の症状)
息が吸えなくなり、窒息するのではないかという感覚が恐怖心を招きます。
密室に入れられたよう、と表現する人もいます。
腹部の不快感(腹部の症状)
- 胃をぎゅーっとつかまれる
- お腹の中がぐちゃぐちゃになる
と不快感を表現する人もいます。
実際に強い吐き気に襲われ、吐いてしまう人もいます。
失神しそうな感じ(精神症状)
- 頭を後ろから引っ張られる
- 頭から血の気がひいていく
- めまいがする
など、様々に表現されます。
制御できない恐怖(精神症状)
強い恐怖や不安により気が変になってしまうのではないか、人前で取り乱してとんでもないことをしてしまうのではないか、と恐れる状態。
自分が自分でない感じ(精神症状)
自分の行動や思考を、自分が感じ取る力が弱まった状態(離人感)。
「自分の心や体を、もう一人の自分が外から眺めている」
などと訴えます。
また、症状が形を変えて、
「孤独感に襲われる」
などと訴える人もいます。
現実感がない(精神症状)
自分の存在を感じる力が弱まった状態。
現実感がなくなり、自分の周囲の状況をいきいきと感じることができなくなります。
「頭にかすみがかかったよう」
「雲の上を歩いているよう」
などと訴える人もいます。
死にそうになる(精神症状)
動悸や震えなどの激しい身体症状に伴い、不安や恐怖が強まり、死を強く意識します。
しびれ、うずき感(全身症状)
じんじん、ぴりぴり、ちくちく、ムズムズ、といった不快なしびれ感やうずき感が起こります。
腰が抜ける、肩がこる(全身症状)
筋肉が固くなり、体が重く、動かしにくく感じます。
次回、「パニック症はどんな経過をたどるのか」へ続く