うつ病になる人は年々増えていると言われており、厚生労労働省の調査では、日本の潜在的なうつ病患者の人数は600万人を超えると言われています。
うつ病患者の中でも、最近増え始めていると言われているのが「非定型うつ病」と呼ばれるニュータイプのうつ病です。
「非定型うつ病ってどんな病気?」では、専門家でも理解が不十分とも言われている「非定型うつ病」とは、どんな病気なのか?その症状や治療法などを紹介していきます。
第33回は、「パニック症とパーソナリティ障害の関係」の続き、「その他の非定型うつ病と症状が似ている病気」をみていきます。
その他の非定型うつ病と症状が似ている病気
1年の中で、うつと躁が入れ替わる「季節性うつ」
1年の中で、季節によってうつがきたり、躁状態になったりするのが「季節性うつ病」です。
これには日照時間が関係するので、北半球と南半球とでは、うつがあらわれる時期が逆になります。
北半球では9月~10月頃から、南半球では2~3月頃からうつが始まります。
季節性うつ病と非定型うつ病は症状が似通っていて、抑うつ症状があることは当然として、季節性うつ病では、過眠と過食があるのです。
また、季節性うつ病でも、非定型うつ病と同じように甘いものが無性に食べたくなる症状があります。
一方、違うところも当然あり、それが「性格特性」です。
非定型うつ病の人は、基本的に不安気質ですが、季節性うつ病の人は典型的な循環気質(※)で、円満で穏やか、争いを嫌い、親しみやすい気質をみせます。
季節性うつ病の治療は、気分安定薬の炭酸リチウムが特効薬です。
また、毎朝数時間、光にあたる光照射療法も効果的です。
このように、治療法が全く違うので、診断はとても重要になります。
鑑定のポイントは、2年以上続けて、季節性の抑うつ状態がみられる、という点になります。
強い倦怠感や疲労が続く「慢性疲労症候群」
「慢性疲労症候群」は、原因不明の強い倦怠感や疲労が、長期間続く病気です。
非定型うつ病の鉛様疲労のようなこの疲労は、休養や睡眠では改善しないという特徴があります。
疲労以外の症状は、
- 微熱
- 咽頭痛
- 顎部またはリンパ節の腫れ
- 原因不明の筋力低下
- 筋肉痛
- 感覚過敏(音が大きく聞こえる、光がまぶしいなど)
- 思考力の低下
- 感情不安定
- 睡眠障害(不眠、過眠、多夢など)
など多岐にわたります。
慢性疲労症候群の人は、パニック発作が起こることもあり、またうつ病の併発も多くみられます。
そのため、慢性疲労症候群の患者さんの一部に、非定型うつ病やパニック症が混ざっていることも十分考えられます。
慢性疲労症候群と、非定型うつ病との鑑別は難しいところがありますが、一部にウイルス完成後に発症するものがあり、こちらは明らかに非定型うつ病とは異なると考えられています。
(※)…循環気質
ドイツの精神学者クレッチマーが提唱した「循環気質」は、うつ病になりやすい性格と言われています。
社交的、善良、情が深い、親しみやすい、などの特徴があり、おだやか、口数が少ない、物柔らかいという一面もあります。
爽快と悲哀という両面の傾向があり、こういった気質の人たちは、活発と緩慢の間を揺れ動きます。
そのため、優柔不断で決断力に欠けるところがあり、それが「躁うつ病」を引き起こす誘因になると考えられています。
次回、「非定型うつ病の診断」へ続く