うつ病になる人は年々増えていると言われており、厚生労労働省の調査では、日本の潜在的なうつ病患者の人数は600万人を超えると言われています。
うつ病患者の中でも、最近増え始めていると言われているのが「非定型うつ病」と呼ばれるニュータイプのうつ病です。
「非定型うつ病ってどんな病気?」では、専門家でも理解が不十分とも言われている「非定型うつ病」とは、どんな病気なのか?その症状や治療法などを紹介していきます。
第4回は、「非定期うつ病になっていませんか?あなたの心の健康度をチェック!」の続き「非定型うつ病の症状 ① 気分反応性」をみていきます。
非定型うつ病の症状 ① 気分反応性
「気分反応性」は非定型うつ病の基本症状
非定型うつ病の人は、「気分反応性」という特徴をもち、そのため「自分勝手」「気まぐれ」などと誤解されることがあります。
気分反応性とは、周りの状況に反応して、気分が浮き沈みすることです。
どんな人でも、良いことがあれば気分がよくなり、悪いことがあれば気持ちが沈みますが、非定型うつ病の場合、そのアップダウンの波が極端です。
例えば、
- 誰かに褒められる
- 親しい友人とおしゃべりする
- 好きなテレビ番組を見る
- 趣味の音楽を楽しむ
- 欲しかったものが手に入る
など、自分にとって好ましい出来事があると、非定型うつ病の人は、うつ症状が軽くなったり消えたりすることがあります。
定型うつ病の人が、周りでどんなことがあっても、いつも鬱々として楽しめず、沈んだ様子でいるのとは対照的です。
一方、この気分反応性は逆方向にも作用することがあり、少しでも嫌なことがあれば、気分がふさいで落ち込みます。
はたから見ると、ごくささいに思えることでも、本人は激しく反応します。
気分反応性は、非定型うつ病を特性するときの基本症状で、診断基準には「好ましいことがあると気分がよくなる」ことが第一条件になっています。
しかし、実際の臨床現場では、逆方向の「ささいなことで激しく落ち込む」患者さんの方がより多く見られます。
非難をするのは逆効果
気分反応性は、次のような行動になってあらわれます。
患者さんは、自分にとって都合のよいことや楽しいことは活発に行うため、とてもうつ病には見えません。
若い女性なら、ついさっきまで落ち込んで寝ていたのに、彼から電話がかかってきた途端に元気になり、おしゃれをして出かけたりする…といったこともあります。
その一方、嫌なことや都合が悪いことがあると、体が鉛のように重くなったり(鉛様麻痺)、眠くて仕方がない(過眠)といった症状がひどくなり、不活発になります。
事情をよく知らない人は、自分の都合がいいように、わざとやっているのではないかと誤解したり、冷たい目で見ることもあるかもしれません。
自分勝手でワガママな人間と思うかもしれません。
しかし、この気分反応性こそが病気のなせるわざで、本人は自分の意思でやっているわけではなく、病気が「そうさせている」と考えてください。
非定型うつ病は「感情の病気」のため、プライドが傷づけられるような言葉には激しく、病的に反応します。
非難したり、責めたりするのは患者さんの感情をいたずらに刺激するだけなので、症状はますます悪化するでよう。
それよりも、本人の気持ちが落ち着いたことを見計らって「はたからはこう見える」というように第三者的に客観的なアドバイスをするようにしましょう。
次回、「非定型うつ病の症状 ② 過眠・過食」へ続く