うつ病になる人は年々増えていると言われており、厚生労労働省の調査では、日本の潜在的なうつ病患者の人数は600万人を超えると言われています。
うつ病患者の中でも、最近増え始めていると言われているのが「非定型うつ病」と呼ばれるニュータイプのうつ病です。
「非定型うつ病ってどんな病気?」では、専門家でも理解が不十分とも言われている「非定型うつ病」とは、どんな病気なのか?その症状や治療法などを紹介していきます。
第43回は、「非定型うつ病 回復のポイント ① 規則正しい生活リズム」の続き、「非定型うつ病 回復のポイント ② 仕事を休むのがベストとは限らない」をみていきます。
目次
非定型うつ病 回復のポイント ② 仕事を休むのがベストとは限らない
会社勤めの患者さんの場合、うつ病になると通常は休職をすすめられます。
しかし、非定型うつ病の場合は、休職がベストとは限りません。
仕事を続けた方がよい場合も多くみられます。
仕事を続けることがプラスに働く
うつ病治療の三本柱は、
- 休養
- 薬物療法
- 精神療法
とされています。
なかでも休養は大切で、会社勤めをしている患者さんの場合、医師は休職をすすめます。
しかし、これは定型うつ病の場合で、非定型うつ病の患者さんにとっては、仕事を休むことが必ずしもベストとは限りません。
非定型うつ病には、「気分反応性」という特徴により、周りで起こる出来事に気分が左右されてしまいます。
好ましいことがあると、うつ気分は軽くなりますが、逆に嫌なことがあると落ち込みは激しくなります。
そのため、仕事への意欲が強い人が休職したりすると、精神的ダメージから更にふさぎ込むようになってしまいます。
また、非定型うつ病は過眠を伴うため、家にいてゴロゴロと寝てばかりいたら、睡眠~覚醒のリズムが一段と乱れて病気が悪化します。
そのまま引きこもりになったり、仕事そのものを辞めてしまう場合もあります。
一方、気持ちを前向きにして仕事を続けることで、病気が良くなる人が数多くみられます。
非定型うつ病の人は、うつ状態が中程度までで、体が動くようだったら、多少無理をして仕事を続けた方が経過は良いと考えられるのです。
【仕事を続けるメリット】
- 職場に通うことで一定のリズムができる
- 外に出ることで体を使う
- 睡眠時間が規則的になる
- 仕事中はうつ気分を忘れることができる
【仕事を続けるメリット】
- 対人関係に不必要に気を使う
- 過労でうつが悪化する可能性がある
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以上のように、仕事を続けるメリットは大きいのですが、これもケースバイケース。
人間関係が複雑な職場で、それが発祥の誘因と考えられる場合や、職場に対する恐怖心や嫌悪感が強い場合は、休職した方がよいでしょう。
いづれにしても、非定型うつ病になると、非常に疲れやすくなるため、仕事を続ける場合も節制を心がけ、規則正しい生活にしていくことが大切になります。
職場の理解と協力を得る
非定型うつ病になると、仕事上のミスやトラブルが目立ってきます。
また、感情が過敏になるため、人間関係がギクシャクすることもあるかもしれません。
非定型うつ病の人が仕事を続けていくためには、職場の人の理解や協力が欠かせません。
●上司や同僚の人は
気分反応性や拒絶過敏症といった、非定型うつ病の特徴をまず理解するようにしてください。
ズル休みをしている、仕事に対して無気力、失敗が続く…などの誤解をしていないでしょうか。
これは性格の問題ではなく、病気に症状からきている、と理解してください。
本人から、非定型うつ病の診断書が提出されたら、
- 本人の希望も聞きながら勤務時間、仕事内容など、無理のない方法を探ります。
- 職場の配置換え、異動、仕事の割り振りなどを検討する。
- 病気のことは個人情報のため、本人の了解を得た上で、信頼できる少人数の人だけに伝える。
以上のような配慮が必要です。
●患者さん自身は
仕事を続けるには、自身を律することも必要です。
- 勤務時間に合わせて規則正しい生活を続ける。
- 毎日、通勤の1時間前には起床し、23時までには就寝する。
- 勤務時間中は起きていられるようになっているか?(過眠状態を脱しているか?)
- 食事は決まった時間にとる。
- 認知行動療法で自己表現や自己主張の技術を磨く。
次回、「非定型うつ病 回復のポイント ③ 体を動かす」へ続く