うつ病になる人は年々増えていると言われており、厚生労労働省の調査では、日本の潜在的なうつ病患者の人数は600万人を超えると言われています。
うつ病患者の中でも、最近増え始めていると言われているのが「非定型うつ病」と呼ばれるニュータイプのうつ病です。
「非定型うつ病ってどんな病気?」では、専門家でも理解が不十分とも言われている「非定型うつ病」とは、どんな病気なのか?その症状や治療法などを紹介していきます。
第56回は、「非定型うつ病 回復のポイント ⑬ アサーション」の続き、「パニックが起こっても慌てない対処法」をみていきます。
目次
パニックが起こっても慌てない対処法
周囲の人は、患者さんと一緒になって慌てたりせず、まもなくおさまるので冷静に。
本人には楽な姿勢をとってもらい、ゆっくり複式呼吸をするよう、声をかけましょう。
大切なのは冷静さと落ち着き
パニック発作は、パニック症の特徴的な症状ですが、それ以外の不安症(社交不安、限局性恐怖症など)でも起こります。
文字通りパニックに陥ったような激しい症状で、慣れないうちは周囲の人も慌てると思います。
しかし、ここは落ち着いて対処してください。
パニック発作で死ぬことはありませんし、薬でのコントロールが可能です。
軽症の場合は、薬物療法を始めて1週間以内に発作はおさまります。
しかし重症の場合は、完全に症状が消えるまで、2~3か月かかることがあります。
そのため、薬の効果があらわれるまでに発作が起こることも考えられます。
その時は、次のような対処を試してみてください。
楽な姿勢をとる
発作が起きたら、横ばいになるか、頭がひざの間に入るくらい前かがみになって椅子に座るようにします。
こうすると自然に複式呼吸となり、過呼吸を防いで自律神経を安定させることができます。
吸うよりも吐く
過呼吸が激しくなってくると、不自然に息を吸い込もうとしてしまうので、むしろ止めるようにすれば自然に空気が入ってくるようになります。
また、息を吐くときはできるだけ長くして、最後は排便するときのように、気張って吐ききるようにします。
すると息を吸うのも自然になり、呼吸も楽になります。
息を吸うときは、深くゆっくりと、です。
こわがらない
パニック発作は不安が源になって起こるので、怖いという気持ちが強いほど発作が激しくなります。
「体の病気の心配はない」「怖がらなくても大丈夫」と考えるようにしましょう。
神経がやすらぐツボを押す
発作が軽いときは、「すぐ良くなる」と、唱えながら神門というツボ(手のひらを上にし、手首を曲げると、横ジワができます。そのシワを小指の方になぞっていくと、小さな骨にあたる前にくぼみがあります。そのくぼみの中ほどにあるのが神門)をおさえてみましょう。
神経が休まり、気分が楽になります。
抵抗しないで受け入れる
発作を抑える薬を飲んでも、薬の効果があわれるより、発作が消える方が早いものです。
無理に抵抗しないで、症状を受け入れる気持ちの方が楽に過ごせます。
記録をつける
発作が収まってきたら、患者さん自身で、どんな症状があらわれたか、その程度やあらわれた症状の順序、どんな思いが浮かんだか、などをメモしておきましょう。
そのための専用ノートを作っておくと、診察にも役に立ちます。
家族の対応
発作が起こると周囲の人も焦ってしまいがちですが、患者さんと一緒に慌てたり騒いだりしないように、冷静な対処が必要です。
患者さんには楽な姿勢をとってもらい、背中を静かにさすったり、手を握りながら、「大丈夫」と声をかけます(「大丈夫?」と質問にはしない)。
いつも一緒に複式呼吸をしてあげることも患者さんにとっては嬉しいことです。
次回、「自傷行為への理解と対処法」へ続く