うつ病になる人は年々増えていると言われており、厚生労労働省の調査では、日本の潜在的なうつ病患者の人数は600万人を超えると言われています。
うつ病患者の中でも、最近増え始めていると言われているのが「非定型うつ病」と呼ばれるニュータイプのうつ病です。
「非定型うつ病ってどんな病気?」では、専門家でも理解が不十分とも言われている「非定型うつ病」とは、どんな病気なのか?その症状や治療法などを紹介していきます。
第57回は、「パニックが起こっても慌てない対処法」の続き、「自傷行為への理解と対処法」をみていきます。
目次
自傷行為への理解と対処法
リストカットは「死ぬほど苦しんでいる」「助けて欲しい」というサインと同じ。
患者さんは理解を求めているので、「狂言」だと片付けるのはやめましょう。
うつ病とパニック症を併発すると危険率はぐっと高くなる
非定型うつ病の人は、自殺を考えたり、実際に行動に移す人が、他のうつ病に比べて多いと言われています。
ただし、非定型うつ病の場合、それほど苦しいというサインのことが多く、自殺企図はしていても、本当に亡くなってしまうケースは、それほど多くはありません。
ところが、パニック症とうつ病を併発していると、自殺の危険率はぐっと高くなります。
患者さんの自殺願望は、多くの場合「自傷行為」という形であらわれます。
「自傷行為」とは、自分で自分を傷つける行為で、頭を壁に打ちつけたり、皮膚に爪を立ててかきむしったり、腕を噛んだり、リストカット(手首を切る)をしたりします。
家族など周囲にいる人にとって、こういった行為はショックでもあり、心配なことだと思います。
そこで、これらの自傷行為をどう理解し、対処したらよいのか、みていきましょう、
逃避
自傷行為は、患者さんが不安や抑うつ発作に耐えられず、その苦しさから逃れようとする行為です。
中でもリストカットは、自責感や離人感から逃げだしたいために、強い痛覚刺激を起こして生きていることを確かめようとする行為です。
リストカットが最も起こりやすい時間は、不安・抑うつ発作が起こる夕暮れから深夜にかけてです。
サイン
患者さんは本当に死を願っているわけではなく、「死ぬほど苦しんでいる」ことを回りに伝え、「助けを求める」サインを出すために、自傷行為をすることが多いようです。
だからと言って、周囲の人は「本当に死ぬ気はない」のだから「狂言」と片付けることは絶対にしてはいけません。
理解を得られない患者さんは、さらに孤独を深め、病気が悪化することもあります。
理解
リストカットをした人に対して、「どうしてこんなことをしたのか!」と叱るのではなく、「それほどツラかったんだね」という言い方のほうが良いでしょう。
心の病気は目に見えるものではなく、その苦しさは本人しか分からないものがあります。
しかし、「理解しようとする」ことはできます。
周囲の人の「分かろうとする」思いは、患者さんへ必ず伝わりますし、それが自傷行為の抑止にもつながるのです。
対処法
統計によると、非定型うつ病の人は、週に3~4回、不安・抑うつ発作が起きています。
自傷行為は、繰り返される不安・抑うつ発作から逃れるための行為なので、対処法としては、まず不安・抑うつ発作を、薬か認知行動療法で抑制することが大切になります。
また、自責感については、十分な認知行動が必要です。
注意
助けを求めるヒントとしての自傷行為ではなく、怒り発作が激しくなったり、攻撃性を持ったときに衝動的に自殺してしまう場合があるので注意が必要です。
次回、「患者さんをどう理解し接したらよいか」へ続く