うつ病になる人は年々増えていると言われており、厚生労労働省の調査では、日本の潜在的なうつ病患者の人数は600万人を超えると言われています。
うつ病患者の中でも、最近増え始めていると言われているのが「非定型うつ病」と呼ばれるニュータイプのうつ病です。
「非定型うつ病ってどんな病気?」では、専門家でも理解が不十分とも言われている「非定型うつ病」とは、どんな病気なのか?その症状や治療法などを紹介していきます。
第58回は、「自傷行為への理解と対処法」の続き、「患者さんをどう理解し接したらよいか」をみていきます。
目次
患者さんをどう理解し接したらよいか
患者さんに対しては、やさしく受容的な対応が基本です。
同じ土俵に立って批判しても、本人の感情を刺激するだけで病気が悪化することもあります。
ただし、多少の励ましは必要です。
家族に理解されないままでは病気が長引く
非定型うつ病には、普通のうつ病(定型うつ病)とは違った特徴があることを、家族はしっかり理解していきましょう。
特に、
- 本人の自尊心を傷づける言葉
- 過労
- 睡眠不足
- かぜ
は、病気を悪化させるリスクがあることを知っておいてください。
非定型うつ病の人がいると、周囲の人は会話に神経を使ってピリピリした雰囲気になりますが、それもよくありません。
ストレスのない生活環境を整えてあげるのも、家族の役割です。
定型うつ病の人は、周囲で何が起こっても関心を示しませんが、非定型うつ病の人は周囲の人に影響されます。
家族に理解されないままでは、病気はよくなりません。
また、パニック症を併発すると、経過は長くなります。
患者さんの身近にいる家族は様子に気を配って、早めに治療へ導くことが治癒へのポイントになります。
感情を刺激しない。ただし多少の励ましは必要
非定型うつ病の特徴を踏まえながら、周囲にいる人たちは患者さんとどう接したらよいか考えましょう。
気分反応性への対応
患者さんは、自分に都合がよかったり楽しいと思うことには活発になります。
しかし、都合が悪いことがあるとてきめんに体が鉛のように重くなったり(鉛様麻痺)、眠くてしかたがない(過眠)といった症状が酷くなり、不活発になります。
これを気分反応性といいますが、こういった自分勝手としか思えない言動に触れれば、つい感情的になってしまいます。
しかし、非難したり責めたりするのは患者さんをいたずらに刺激するだけです。
激しく病的な反応が返ってきて、病状はますます悪化してしまうため逆効果なのです。
それより、患者さんが落ち着いたころを見計らい、客観的なアドバイスをした方がコミュニケーションが深まります。
保護するだけでは病気は進む
定型うつ病の人に対しては「励ましてはいけない」と言われますが、非定型うつ病の人に対しては多少の励ましは必要です。
非定型うつ病の人の場合、仕事を続けた方が病気の経過によい影響を与えるように、回復には前向きな気持ちが必要なのです。
前向きな気持ちは保護的な環境の中だけで守られているだけでは生まれまず、病気は長引くだけです。
周りにいる家族が励ましながら、患者さんにチャレンジする気持ちを持たせたり、自分の病気を客観的に見つめ、自己コントロールできるように導いてあげることも大切なのです。
この時の言葉遣いはあくまでも優しく、です。
しかし、患者さんがワガママに思えるような場合は、状況を判断した上で、こ「言葉ではなく態度」で律するようにします。
この手加減がポイントです。
アップダウンが激しい患者さんの気分に反応していると、感情的な物言いになりがちですが、相手は苦しみ、悩んでいる病人です。
つとめて冷静に、困った言動も病気の症状だと理解し、患者さんの言葉に耳を傾け、気持ちを汲み取りながら、あたたかな雰囲気でゆっくりと話をしてみてください。
了