うつ病になる人は年々増えていると言われており、厚生労労働省の調査では、日本の潜在的なうつ病患者の人数は600万人を超えると言われています。
うつ病患者の中でも、最近増え始めていると言われているのが「非定型うつ病」と呼ばれるニュータイプのうつ病です。
「非定型うつ病ってどんな病気?」では、専門家でも理解が不十分とも言われている「非定型うつ病」とは、どんな病気なのか?その症状や治療法などを紹介していきます。
第6回は、「非定型うつ病の症状 ② 過眠・過食」の続き「非定型うつ病の症状 ③ 鉛様麻痺」をみていきます。
非定型うつ病の症状 ③ 鉛様麻痺
気分が落ちると体にあらわれる極度のだるさ
心の病気は、さまざまなシグナルを体に送ってきますが、非定型うつ病の場合、「鉛様麻痺」という症状があらわれます。
まるで手足に鉛が詰まってしまったように、体が重く感じる症状です。
この症状があらわれると、単に疲れやすいといったレベルを超えて、立ち上がるのさえ困難になるほど、全身が極度にだるくなります。
この症状は、過剰な運動をしたために起こるものではなく、嫌なことがあり気分がふさぎ込んだときに起こりやすくなります。
非定期うつ病を診断するときに基本となる症状は気分反応性ですが、鉛様麻痺も、それに劣らないほどとても重要な症状です。
理解のない人いから誤解されることの多い症状
非定型うつ病では、嫌なことがあると、それに反応して気分がふさぎ、落ち込みますが(気分反応性)、それと同時に鉛様麻痺もあらわれ、体が重くなり行動できなくなります。
つまり、心と体が連動して「うつ」に陥り、過眠も伴うため、横になっているしかない状態になってしまいます。
会社勤めの人なら、朝起きようとしてもどうにも起き上がれず、欠勤が続いてしまう…ということにもなりかねません。
本人はわざと動かないのではなく、自分の意思ではどうにもならないところで体が反応して、このような状態になるのですが、第三者の目には、嫌なことから逃れるためにやっている、と映ってしまい、本当に具合が悪いのか?と疑いの目で見られることもあります。
自分でなんとかしたいと病院を受診しますが、検査を重ねても「異常なし」という結論になり、時には「慢性疲労症候群」と診断されることもあります。
鉛様麻痺のような身体症状の場合、最初は心の病気だとは思わないため、受診するのは精神科ではなく、一般の医療機関になり、医師も専門医ではないため見逃されてしまいます。
非定型うつ病は、病気を理解していない人から誤解されがちな病気ですが、この鉛様麻痺は、特に誤解を生みやすい症状といえます。
いずれにしても、非定型うつ病は、鉛様麻痺とまではいかないまでも非常に疲れやすくなる病気です。
そのため、患者さんは自分の体をいたわりすぎてあまり動かしませんが、これは逆効果です。
ますます体を動かすのが億劫になり、うつも悪化してしまいます。
鉛様麻痺は「神経性疲労」で、運動をつかさどる前脳の機能が不足している状態ですので、これを改善するには意識的に体を動かすことが大切になります。
次回、「非定型うつ病の症状 ④ 拒絶過敏症」へ続く