「DV被害に遭ったら逃げればいいのに…」
そう考える人も多いと思います。
しかし、実際に被害者の立場になってみると「逃げたくても逃げられない」さまざまな理由があるようです。
今回は、DV被害者の心理について、詳しくみていきます。
前回の記事↓
DVとは?① ~これもDVになるの?DVの定義とは~
DVとは?② ~男女で違う!DVの特徴と原因~
目次
DV被害者はなぜ逃げることができないのか?
DV被害者には、共通してみられる心理や状態があり、それらのために暴力から逃げづらくなっています。
恐怖感・無力感
被害者は暴力を受けることによって、恐怖心や不安感を持ちます。
加害者から「お前が悪いからを暴力をふるうんだ」と何度も責められ、暴力がエスカレートしていくうちに、「もっと暴力をふるわれるのではないか」、「殺されてしまうのではないか」という思考に陥り、恐怖心と不安感が増していきます。
やがて、「自分は夫から離れることはできない」「助けてくれる人は誰もいない」と、逃げる気力すら失くし、無気力状態になってしまいます。
経済的・環境的問題
夫の収入がなければ生活することが難しい場合は、今後の生活を考えて逃げることができなくなります。
また、子どもがいる場合は、子どもの安全や就学の問題が気になり、逃げることに踏み出せない場合もあります。
さらに、夫から逃げる場合は、仕事もやめなければならなかったり、地域社会での人間関係など失うものが大きいことも逃げられない一因になっています。
子どもの頃から親の虐待などを経験している人は、暴力がある環境が当たり前、普通だと思っていることもあります。
加害者に対する期待と恐怖
被害者は、暴力を受けていても、相手がまた優しくなるのではないかと期待したり、自分がいなければ相手がしっかり生活できないのではないか、何か行動すればさらに暴力を振るわれるのではないかと考え、相手から離れられなくなってしまいます。
実際、DV加害者は、ストレスを蓄積する「蓄積期」→激しい暴力をふるう「暴力爆発期」→謝罪して極端に優しくなり二度と暴力をふるわないと誓う「ハネムーン期」の3つを繰り返すと言われています。
自己承認力が低い
DV被害者になる人の中で「自分には価値や能力がない」と考えやすい自己承認力が低い人がいます。
加害者のことを「価値のない自分を受け入れてくれた、たった一人の相手」と受け止めてしまいます。
暴力を受けたり束縛されることを「愛情の証」だと考え、加害者と共依存になるケースもあります。
DV被害者に与える影響
DVにより、被害者は身体に怪我を負うことがあります。
- 挫傷
- 目の周囲のあざ
- ひっかき傷
- 骨折
- 歯が折れる
- やけど
など。
被害者は、怪我のために仕事へ行くことが難しくなり、失業してしまうことがあります。
怪我や虐待関係が他人に知られることを恥じて、被害者の方から家族や友人から遠ざかっていく場合もあります。
また、怪我などの身体的影響だけでなく、PTSD(心的外傷後ストレス障害)や、抑うつ、不安症、摂食障害、物質乱用などの心理的問題を抱えることになります。
そして、その身体症状として、頭痛、腹痛、骨盤痛、疲労などがあらわれます。
DV被害者の心理まとめ
DV被害者はさまざまな心理的要因によって、現状に縛られています。
友人や親族が救いの手を差し伸べても、蓄積された「思い込み」からなかなか向けだせずに、加害者の元へ戻ってしまうことも少なくありません。
DV被害者に必要なのは、専門家による支援を受けることと、適切な心のケアを受けることです。
もし、知り合いにDV被害で困っている人がいたら、自治体やNPOのDV相談所を紹介してあげましょう。
参考:
浦安市, ドメスティック・バイオレンス(DV), 暴力を受けても逃げられないのはなぜでしょう, https://www.city.urayasu.lg.jp/todokede/danjo/1029897/dv/1001419.html,
MSDマニュアル家庭版,ドメスティックバイオレンス, Erin G. Clifton, 2018年 1月