強烈なショック体験や強い精神的ストレスが心の傷となり、時間が経ってから著しい苦痛やフラッシュバックや頭痛などの症状が出る「PTSD(心的外傷後ストレス障害)」。
その原因となる体験は、一体どのようなものなのでしょうか。
前回の記事↓
PTSDとは?① ~フラッシュバック、眠れない…それってPTSDかも?PTSDの症状~
目次
PTSDの原因は?
PTSDの原因はさまざまありますが、一般的に原因となる可能性の高い出来事は、恐怖、無力感、戦慄の感情を引き起こす出来事です。
- 戦争
- 地震などの災害
- 深刻な事故
- いじめ
- 家族、友人の死
- 生死に関わる病気になる
- 虐待
- パワーハラスメント
- 犯罪に巻き込まれる
- 性的暴行
- DV
など。
非常に強い恐怖や精神的なショックを経験することで、心のダメージとなってしまいます。
ほとんどの外傷体験者は、体験後1か月ほどはストレス症状がみられます(急性ストレス障害)。
しかし、数週間くらい経つと、ほとんどの人は外傷的出来事に折り合いをつけて、徐々にストレス症状が治まっていきます。
しかし、誰もがこのように回復するわけではありません。
同じ外傷的出来事を体験しても、ある人は症状が出ず、ある人はPTSDの症状が出る場合については、まだ詳細が分かっていません。
どんな人がPTSDにかかりやすいかは分かっていないため、誰もがかかりうる障害と言えます。
PTSDの治療法は?
PTSDの治療は、主に認知行動療法と薬物療法が有効とされています。
認知行動療法
認知行動療法では、その出来事に対して自分がどのように行動したか、どう感じたかを見直してみて、その考え方を変えていこうというものです。
認知行動療法の中でも、持続エクスポージャー法(暴露法)という、トラウマに焦点をあてたものがあります。
これは、あえて不安や恐怖となった場面をイメージしたり、身を置いてみる方法です。
そうすることで、「何も怖いことはない」「自分は悪くなかった」「これからは良い経験ができる」というような考え方ができるよう、少しずつ心と体を慣らせていきます。
外傷的出来事を客観的に分析することで、自分が不安を感じるものを書き出して順位付けします。
そして、不安順位の低いものから順番に向き合ってみて、少しずつ不安を解消していきます。
その他に、以下のような心理療法があります。
- 集団(グループ)療法
…同じ、もしくは似たような外傷的出来事を経験した人たちがグループになって行われる治療法。似たような経験をした人と一緒なら、外傷体験について話しやすくなります。 - EMDR(眼球運動による脱感作と再処理療法)
…比較的、最近開発された心理学的技法で、PTSDの治療に効果的だと言われています。眼をキョロキョロと動かすと、苦痛な記憶が軽減されることに気づいたのが始まり。 - 対人関係療法
…トラウマとなった外傷的出来事ではなく、トラウマに影響を受けている対人関係や感情に焦点をあて、よりよい対人関係を築けるようサポートする方法。
不安症状が強かったり、一人暮らしの場合は通院ではなく、入院するという選択もあります。
薬物療法
PTSDは、約半数の人がうつ病を合併していると言われています。
抗うつ剤は、PTSDに対する第一選択の治療法と考えられており、うつ症状がない人でも第一選択となります。
不安や、緊張、フラッシュバックには、選択的セロトニン再取込み阻害薬(SSRI)や抗うつ薬、抗不安薬が効果的です。
また、漢方薬を使用することもあります。
漢方薬は効果が出るまでに時間がかかりますが、ゆっくりと効くため身体への負担は少ないのが特徴です。
PTSDまとめ
トラウマとなる外傷的出来事から、1か月以内に症状が出て、その1か月以内におさまる場合を急性ストレス障害(ASD)。
症状が3か月以上続く場合を心的外傷後ストレス障害(PTSD)と言います。
精神的に弱く、不安定だと周囲に思われたくないという理由で、症状が出ていることを誰にも言えない人もいるかもしれません。
しかし、PTSDは強いショックを受けることで誰もがなりえる障害です。
フラッシュバックや頭痛、めまいなどの症状があり、PTSDの疑いがある場合は、早めに病院へ行くことをお勧めします。
また、家族や友人に、PTSDの疑いがある人がいたら、まず行動の変化に気を配り、相手の話に耳を傾け、聴くことに専念しましょう。
参考:
MSDマニュアル家庭版, 心的外傷後ストレス障害(PTSD),John W. Barnhill,2018年10月