近年では、病名として一般認知度が上がって来ている「統合失調症」。
主な症状として、幻聴・幻覚などが知られていますが、それは統合失調症における症状の一部です。
統合失調症については、数回に分けて記事にして行きたいと思っていますが、今回は、統合失調症の症状についてまとめて行きたいと思います。
目次
統合失調症の陽性症状・陰性症状
統合失調症には、大きく分けて、
- 陽性症状
- 陰性症状
の2つの症状が見られます。
陽性症状
統合失調症と聞いて、真っ先に思い浮かべる症状としては、実際には起こっていない事を現実のものと錯覚してしまう『幻覚』の症状が浮かんでくるかと思います。
その中でも、まわりに誰もいなくても話し声が聞こえて来たりする「幻聴」が最も多いと言われています。
このように統合失調症の症状として目立った症状を「陽性症状」といいます。
陽性症状として、その他の幻覚の典型的な症状としては、
- 実際には見えていないものが視えたように感じる「幻視」
- 周りの人には全く感じられない臭いがする「幻臭」
- 誰かに触られている様な気がしてしまう「幻触」
などがあります。
また、幻覚に似た症状として「妄想」があり、
- 誰かにずっと監視されている気がする
- 自分の考えている事・思考などが周りの人に漏れている様に感じてしまう
- 周りの人の会話が自分についての事(特に悪口に感じる事が多い)を話しているように感じる
などの症状があります。
こういった幻覚などの陽性症状が起きているとき、本人にとってはリアル(現実的)に感じられるため、通常では考えられないくらいの恐怖を覚えます。
周りの人から見たときに、統合失調症の知識がなければ、完全におかしくなっていると感じてしまう程です。
さらに、考え方に一貫性がなくなり混乱してパニックを起こしてしまうなどの「思考障害」も陽性症状に含まれます。
現実・非現実といった考え方を統合するフィルターがうまく機能しなくなる症状なので、発言が支離滅裂になる症状もあります。
陰性症状
陽性症状のような統合失調症の特徴的な症状がある一方で、陰性症状と呼ばれる症状もまた存在します。
陰性症状では、うつ状態のような症状が強くでます。
感情の起伏が少なくなる(感情鈍麻)
自分の感情の起伏が少なくなり、平常時に感じる様な喜怒哀楽の表現が乏しくなります。
さらに自分だけでなく、他人の感情表現にも関心が薄れてしまい、必然的に人間関係において孤立してしまいがちになります。
何かをしようとする意欲の減退
仕事や日常生活において、何をしようとしても意欲が無くなってしまう事があります。
酷い場合には、日常生活で当たり前に行っている、着替えや入浴なども自発的に行えなくなる場合もあり、その段階まで来ると「自閉症状」も現れ、自分の世界に閉じこもってしまい、他者とのコミュニケーションを拒絶してしまうなど深刻な状態に陥る事もあります。
盗聴器・盗撮機を探し出す?!
陽性症状で起きる幻覚症状では、本人にとっては周りの人が考えられない程、現実的に様々な幻覚が現れます。
極端な例ではありますが、実際にある事例としては、家の中でも自分が監視されている・幻聴などによる「誰かから命令されている」「誰かから話しかけられている」感覚を覚え、探偵業者などに家の中の盗聴器・盗撮機が無いかを依頼するという事例があるのです。
統合失調症の経過と症状
統合失調症には、症状の段階があります。
- 前兆期
- 急性期
- 消耗期
- 回復期
前兆期
この時点では、まだ特段目立った症状は現れませんが、情緒不安定になったりなど、本人がなんとなく不安になる程度の状態です。
前兆期に、早期治療を行う事が出来ればその後の高い治療効果が期待できます。
急性期
急性期では、陽性症状が顕著に現れてきます。
幻覚・幻聴によるパニックなど、周りの人が気付く程の症状が現れてきます。
急性期に起こる症状で、統合失調症を疑い、出来るだけ早い診療を受けられるといいです。
消耗期(休息期)
急性期で起こっていた、幻覚・幻聴等の陽性症状が落ち着き、一転して活動意欲の減退などの陰性症状がみられます。
日常生活レベルでの活動意欲の減退、長時間の睡眠などにより、周りの人から「怠けている」と思われることもありますが、陰性症状の影響です。
治療をすでに行っている場合は、薬の副作用による眠気などがある場合もあります。
その場合は、回復期に向かう為に必要な時期でもありますので、焦らずに休息を取る事が大切です。
回復期
服薬や定期診療など、適切な治療を受け続けて行けば、回復期に入り、平常の状態に徐々に近づいて行きます。
治療を継続しないと・・・
例え、回復期に入り症状が落ち着いても定期的な診療と薬物治療を継続して行って行かなければ、数年で60%〜80%の患者が再発してしまうというデータがあります。
統合失調症では、ドーパミンやセロトニンなど脳内物質のバランスが乱れて神経のネットワークにトラブルが生じる事で脳機能に障害を起こしてしまう事が原因の1つとされています。
薬物治療では、この脳内物質のバランスを取り戻す役割を担っていますので、継続した服薬が必要になってくるのです。