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統合失調症ってどんな病気?【28】~統合失調症を患者さんと共に克服する~

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「統合失調症」という病気の名前を聞いたことはありますか?

病名は知っていても実際どんな病気なのか?

知らない方も多いのでないでしょうか。

統合失調症は、100人に一人が発症するとも言われている身近な病気です。

しかし、なぜ統合失調症は起こり、どのような経過をたどるのか?

知っているようで、実はあまり知られていないのが統合失調症です。

「統合失調症ってどんな病気?」では、統合失調症の全体図から、症状、治療などについて詳しく解説していきます。

第28回は、「療養生活をサポートする訪問看護」の続き、「統合失調症を患者さんと共に克服する」についてみていきます。

目次

統合失調症を患者さんと共に克服する

病気を受け入れ復帰を目指す

統合失調症の回復には、

  • 薬物療法
  • リハビリ
  • 患者さん本人の養生

が大切ですが、そこには

家族の協力と理解

が欠かせません。

統合失調症と診断されると、多くの家族は強い衝撃を受け、絶望して泣き崩れたり、

「そんなはずはない」

と否定したり、

「育て方が悪かったのだ」

と自分や配偶者を責めることもあります。

ではなぜ、統合失調症と告知されると、家族は動揺するのでしょうか?

多くは統合失調症という病気に対して正しい知識を持ち合わせていないからではないでしょうか。

統合失調症は怖い病気、人格が崩壊してしまう、一生病院から出られない…。

そんな誤解や偏見が、得たいの知れない不安や恐怖を引き起こしていると考えられます。

しかし、統合失調症は100人に1人が発症している身近な病気であり、人格が崩壊してしまうものでは決してありません。

完治は難しいと言われてはいますが、病気とうまく付き合いながら、社会へ復帰している患者さんは大勢います。

また、

「育て方が悪かった」
「遺伝のせいではないか」

などと、発症の因果関係にこだわるのも、実は無意味です。

統合失調症の発症の原因は、「よくわかっていない」というのが現状ですが、少なくとも家庭環境や遺伝の影響だけで発症することはありません。

根拠のない罪悪感や不安感から、患者さんに腫れものでも触るような接し方をしてしまうのは、家族にとっても患者さんにとっても良くありません。

病気を正しく理解し、受け入れることができれば、家族がご自身を責めることも、本人の将来を悲観することもなくなるはずです。

脳の負担を減らせば、薬も減らせる

統合失調症は経過の長い病気です。

10代や20代といった若い世代で発症した場合、、数十年という単位で病気と付き合っていくことになります。

しかし、その間、一貫して悪い状態が続くわけではありません。

よい状態の時もあれば、悪い状態の時もあり、できるだけよい状態を長く維持して、悪い状態に陥らないようにしていく、といのが統合失調症の治療の大きな目標といえます。

注意したいのが、家族も患者さんご自身も悪いことばかりに目がいきがち、ということです。

発症の原因探しが無意味なのと同じように、

「あの時、あれをしたのが良くなかった」
「こんなことをしなければよかった」

などといった後悔や原因探しほど、脳に悪いことはありません。

効くはずの薬もどんどん効かなくなってしまいます。

注目すべきことは、悪かった時ではなく、

「良かった時」

のことです。

人間には「自然治癒力」というものがあります。

良かった時というのは、患者さんが自然治癒力を発揮するために、無意識のうちに脳に何かしらのよいことをしている場合があります。

それは、家族や周囲の人から見ると奇異なこと、腑に落ちないことであったりするかもしれませんが、それでフッと良くなることがあるのです。

家族も患者さんも、悪かった時のことを考えるのではなく、良かった時おことに目を向けてみてください、

何が良かったのか?良かった時に患者さんはどんなことをやっていたのかを考えてみる。

何が良かったのか分からない場合は、良かった時のことを皆で思い出して、その時のことを考えるだけでも構いません。

それは、悪い時を反省するより、脳に良い事なのです。

脳に良い事を少しずつ生活に取り入れていくと、効かなかった薬が効いてくることもあります。

効いていた薬は効きすぎることもあり、量を減らすことも検討できます。

コミュニケーションを大切に

統合失調症の患者さんは病識を持ちにくいため、自分が置かれている状況が分からない、家族の気持ちなど分からないだろうと思われがちですが、そんなことはありません。

幻覚、妄想、興奮といった症状が強く現れている時でさえ、自分が置かれてる状況を不安に思っていますし、家族の様子にも敏感です。

患者さんは、家族に

「理解して欲しい」
「受け入れて欲しい」

と願っています。

しかし、認知機能障害のため、コミュニケーションがうまく図れず、家族との交流もとれなくなり、孤立を深めている場合が少なくありません。

患者さんの悩みや訴えには、できるだけ耳を傾けてあげるようにしてください。

患者さんが同じことを繰り返し話をしていると、「またその話か」と聞き流したくなるかもしれませんが、話を最後まで聞いてあげると患者さんは安心し、コミュニケーションがスムーズになります。

こちらから何を伝える場合は、あいまいな言葉や表現は使わず、会話の内容をできるだけ簡潔にして、理解しやすい言葉づかいで話すようにしましょう。

ただし、患者さんを子どものように扱うのではなく、一人の自立した人間として認め、話をするように心がけることも大切です。

また、早く回復して欲しいという焦りあkら、怠惰な患者さんに苛立ったり、責めてしまったり、奇異な言動に付き合うことに疲れて、理屈で対応して気まずい思いをしたりすることもあるかもしれません。

家族も一人の人間ですので、それも仕方ないこと。

自分を責める必要はありません。

ただ、それでも批判的な言葉だけは出来るだけ避け、患者さんに共感し、理解の姿勢を示すことが患者さんを安心させ、結果、回復につながるのだ、ということを忘れないようにしてください。

家族教室や家族会に参加してみる

統合失調症は経過を辿る病気なので、患者さん中心の生活を続けていると、家族にも疲労やストレスが蓄積されます。

家族が体調を崩したり、精神的に落ち込んだりすると、それは患者さんにも伝わり、回復に悪影響を与えてしまいます。

家族の生活は患者さん中心になりすぎないようにして、自分自身の生活リズムをできるだけ崩さないように心がけることが大切です。

患者さんのケアやサポートは、家族だけでこなせるものではありません。

デイケアや訪問看漢語などを上手に利用し、家族の負担を少しでも減らしましょう。

また、悩みや不安を家族だけで抱えこんでしまうのもよくありません。

困ったことや心配事などがあれば、かかりつけの主治医や看護師、ケースワーカーなどに相談しましょう。

また、地域の保健所や精神保健福祉センターなどにも相談窓口があります。

一方、同じ悩みを抱える人との交流の場として、「家族会」に参加してみる、という方法もあります。

家族会とは、患者さんの家族が主体となって運営・活動している自助グループで、患者さんの家族が集まり、悩みを語り合ったり励ましあったりすることで、お互い支え合うことを目的としています。

また、医療機関や保健所、精神保健福祉センターなどが運営している「家族教室」というものもあります。

こちらは、専門家による講義や質疑応答を通して病気についての正しい知識を学んだり、患者さんへの接し方やコミュニケーションの方法を練習したりします。

複数の家族が一緒に参加して行われるので、自分たちの体験や悩みを語り合ったりすることもできます。

家族の心や生活にゆとりを作るためにも、こうした家族会や家族教室に、積極的に参加してみるのも良いでしょう。


 

次回、「入院中に家族ができること」へ続く


 

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