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非定型うつ病ってどんな病気?【34】~非定型うつ病の診断~

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うつ病になる人は年々増えていると言われており、厚生労労働省の調査では、日本の潜在的なうつ病患者の人数は600万人を超えると言われています。

うつ病患者の中でも、最近増え始めていると言われているのが「非定型うつ病」と呼ばれるニュータイプのうつ病です。

「非定型うつ病ってどんな病気?」では、専門家でも理解が不十分とも言われている「非定型うつ病」とは、どんな病気なのか?その症状や治療法などを紹介していきます。

第34回は、「その他の非定型うつ病と症状が似ている病気」の続き、「非定型うつ病の診断」をみていきます。

目次

非定型うつ病の診断

医師が問診を重ねて臨床経験中から判断する

非定型うつ病の診断は、医師による問診を中心に行われます。

状態のチェックには、主に「DSM-5」の診断基準が使われます。

「うつ病(DSM-5)/大うつ病性障害エピソード」の症状を5つ以上示すか、または「気分変調症」があり、(※1の、「非定型うつ病の特定基準」がみられる場合、非定型うつ病と診断されます。

しかし、臨床の現場で患者さんを見ていると、うつ病(DSM-5)/大うつ病性障害エピソードの診断基準「うつ病症状がほとんど一日中、ほとんど毎日、2週間以上続いている」や、気分変調症の「うつ病症状がほとんど一日中、ない日よりある日の方が多く、少なくとも2年間続いている」という基準を満たしている人は、それほど多くはなく、実際には、うつ1日のある時間だけ、1週間に数日だけみられる、という人が大部分で、これが「プチうつ病」と呼ばれる所以になっています。

また、非定型うつ病の特定基準そのものにも、いくつか不確実な部分があることが指摘されています。

●「気分反応性」は逆方向が多い

DSM-5では、非定型うつ病を断定する第一の前提が「よいことがあると気分が明るくなる気分反応性」があることです。

しかし、実際の患者さんは、ささいなことで激しく気分が落ち込んだり、ふさいだりする「逆方向の気分反応性」の方がずっと多くみられます。

また、非定型うつ病が重症になると、気分反応性がみられなくなることが多くなる上、気分反応性は、非定型うつ病だけではなく、それ以外のうつ病にもみられることがあります。

つまり、非定型うつ病を診断する上で、気分反応性はそれほど重要ではない、という意見もあり、現在議論が進んでいます。

●基本症状より重要な副症状

DSM-5の診断基準では、気分反応性に加えて、

  • 体重増加または過食
  • 過眠
  • 鉛様麻痺
  • 拒絶過敏症

のうち、2以上があると、非定型うつ病の診断が確定され、1つであれば疑いがある、とされます。

これらの4つの症状は、診断基準では「基本症状(気分反応性)」に続く、副症状とされていますが、非定型うつ病を診断する上では、非常に重要な症状です。

例えば、気分反応性があるかどうかにかかわらず、過食(体重増加)と過眠の2症状だけを基準にしても、非定型うつ病の診断では有効である、ともいわれています。

また、拒絶過敏症こそが非定型うつ病の中核である、という考え方もあります。

非定型うつ病の人は、もともと周囲の人の目を気にして他者へ配慮する傾向があり、それが病気によって過剰になったのが拒絶過敏症で、ここに病気の本質があると考えられるのです。

ただ、拒絶過敏症は、回避性パーソナリティー障害と相通じる部分があるため、非定型うつ病は往々にしてパーソナリティー障害と間違われることもあります。

そのため、診断は慎重に行う必要があるのです。

●診断を難しくしている背景

体の病気なら、原因となる物質を、血液や尿、細胞などを採取して検査・測定したり、X線やCT、MRIなどの画像検査を行って異常を見つけることが可能です。

しかし、非定型うつ病のような精神疾患の診断ではこれらができません。

精神科医が患者さんとの問診を重ね、臨床経験の中から判断していくので、難しいケースもあるのです。

精神医学では、このような患者さんに、いろいろな薬や治療法を試し、経過を観察しながら、その人に合った薬や治療法を見つけ出す、という方法をとることがあります。

ところが、日本では非定型うつ病に最も効果をモノアミン酸化酵素阻害薬(MAOI)が、まだ認可されていません。

非定型うつ病の診断を困難にしているのは、診断基準の不確実さに加え、こういった事情もあります。

非定型うつ病の特定基準(DSMによる診断基準)

うつ病(DSM-5)/大うつ病性障害エピソード、または気分変調症があり、下記の特徴がある場合、非定型うつ病と特性する。

・気分反応性(好ましいことあると気分がよくなる)がある
・気分反応性があり、さらに次の症状が2つ以上ある
(1)著しい体重増加、または過食
(2)寝ても寝ても眠い(過眠)
(3)手足に鉛が詰まったように重くなる、激しい疲労感(鉛様麻痺)
(4)批判に対して過敏になったり、引きこもる(拒絶過敏症)


 
次回、「パニック症の診断」へ続く


 

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