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非定型うつ病ってどんな病気?【40】~広場恐怖症を改善する行動療法~

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うつ病になる人は年々増えていると言われており、厚生労労働省の調査では、日本の潜在的なうつ病患者の人数は600万人を超えると言われています。

うつ病患者の中でも、最近増え始めていると言われているのが「非定型うつ病」と呼ばれるニュータイプのうつ病です。

「非定型うつ病ってどんな病気?」では、専門家でも理解が不十分とも言われている「非定型うつ病」とは、どんな病気なのか?その症状や治療法などを紹介していきます。

第40回は、「パニック症の治療 ② 治療に使われる薬」の続き、「広場恐怖症を改善する行動療法」をみていきます。

目次

広場恐怖症を改善する行動療法

不安や恐れを抱いてしまう心の動きは、薬では治せません。

それを改善するのが暴露療法です。

不安を感じる場面をあえて経験し、それを積み重ねることで、心の免疫をつくっていきます。

不安や恐怖の解消法を自分で体験して身につける

パニック症は薬がよく効く病気ですが、心の動きまで薬で治すことはできません。

パニック症でやっかいなのは、いったん発作の恐怖を体験すると、「また起きるのではないか」という予期不安を抱いて、発作が起こりそうな場所や状況を避ける(広場恐怖症)ようになってしまうことです。

人によっては恐怖する対象がどんどん広がり、家から出られなくなったり、一人では行動できなくなる場合もあります。

広場恐怖症は薬では治らないとされていますが、回復法として効果が認められているのが「行動療法」です。

この療法の良いところは、不安や恐怖を解消する方法を自分自身で体験していくところにあります。

うまく身につけると、薬物療法よりも効果が長続きする、という専門家もいます。

誤って学習したことを正していく暴露療法

行動療法は、認知行動療法の一つで、パニック症で行うのは「暴露療法(エクスポージャー)」と呼ばれる方法です。

患者さんが不安や恐怖を感じる場所や状況にあえて身をさらして(暴露して)、そうした場所や状況に徐々に慣れていき、最終的には不安や恐怖感を完全に取り除けるようになることを目指します。

暴露療法は、よく「パブロフの犬」の実験に例えられます。

犬にエサを与える時にいつもベルを鳴らしていると、犬はベルを鳴らしただけでも条件反射的によだれを垂らすようになります(実際はエサがなくても)

犬は、「ベルが鳴る=エサがもらえる」と学習してしまうのです。

広場恐怖症の起こり方もこれと似ていて、例えば電車に乗っている時にパニック発作が起こった人は、電車に乗るとまた発作が起こるのではないかと思いこみ、電車を避けるようになります。

本来は全く関係がない電車と発作が関連づけられて学習され、条件反射が形成されてしまいます。

そして、再び電車の中で発作が起こると、この誤った学習が強化されて、訂正することが難しくなり、広場恐怖症が固定されてしまうのです。

では、誤って学習したものを消去するには、どうしたらよいのでしょうか?

先ほどの犬の例でいえば、ベルを鳴らしてもエサを与えないことを繰り返すわけです。

すると、犬はだんだんベルの音に反応を示さなくなってきます。

暴露療法は、このような条件反射の消え方を応用した治療法です。

不安に思っている場面に直面しても発作が起こらなければ、不安は自然と軽くなり、それを繰り返すうちに不安が解消されます、

不安や恐怖が軽い場面から段階的に繰り返し行う

暴露療法が具体的にどのように行われるのかみてみましょう。

●まず、患者さん自身が不安や恐怖を感じる場面を10項目書き出してもらいます。
そして、それぞれの場面で不安の程度が弱いものから強いものへ段階をつけていきます。
これを「不安階層表」と言います。

●書き出された項目はその患者さん独自の不安階層表になるので、これが暴露療法のメニューとなります。

●患者さんは自分の階層表にしたがって、暴露療法を行っていきます。

●最初は不安の程度が弱いものからはじめ、だんだん強いものへと進めていきます。

●はじめは、医師や臨床心理士など専門家の付き添いで、次は家族など身近な人の付き添いで、最後は一人で行動できるようにします。

●暴露療法の重要なポイントは、どんなに不安を感じても途中で逃げずに、一定時間我慢をして、不安が軽くなることを自ら体験することです。

●不安は数分間でピークになりますが、激しい不安はいつまでも続きません。時間が経過するにつれて少しずつ軽くなります。その時間は最低で15分程度、最長でも90分程度といわれています。

●不安がしずまる前に逃げ出すと、その時は一時的に軽くなりますが、結局のところ不安はいつまでも消えません。逆に我慢をして不安が軽くなるのを身をもって体験すると、その経験を積み重ねていくことができます。効果をあげるためには、同じ多面で暴露療法を繰り返し、経験をしっかり身につけることが重要です。


 
次回、「認知行動療法の効果をあげる自律訓練法」へ続く


 

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