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非定型うつ病ってどんな病気?【28】~社交不安症はどんな場面が怖いのか~

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うつ病になる人は年々増えていると言われており、厚生労労働省の調査では、日本の潜在的なうつ病患者の人数は600万人を超えると言われています。

うつ病患者の中でも、最近増え始めていると言われているのが「非定型うつ病」と呼ばれるニュータイプのうつ病です。

「非定型うつ病ってどんな病気?」では、専門家でも理解が不十分とも言われている「非定型うつ病」とは、どんな病気なのか?その症状や治療法などを紹介していきます。

第28回は、「社交不安症とはどんな病気か」の続き、「社交不安症はどんな場面が怖いのか」をみていきます。

目次

社交不安症はどんな場面が怖いのか

社交不安症の人が「こわがる場面」は非常に多様です。

本人は「恥をかく」「人から嫌われている」と思い込むため、そのような場面を避ける回避行動にも繋がっていきます。

人との接し方が分からず嫌われていると思い込む

社交不安症の人は、他人からの評価を過剰に気にするため、自分が他人から否定されたり、嫌われたり、恥をかかされたりすることに強い不安を持ちます。

そのため、恥をかいたり否定されたりしそうな場面を怖がり、避けるようになっていきます。

患者さんが避ける場面は、本人がこだわっていること、社会風潮、価値観などを反映して、時代によっても変わっていきます。

ただし、ある程度の傾向はあって、例えば、人前で話しをしなければならない場面(スピーチ恐怖)や、人と相対する場面(対人恐怖)を怖がる人が多いようです。

●対人恐怖

本人は、

「人とどう接していいのかわからない」
「人との付き合い方やコミュニケーションの取り方がわからない」

と、悩んでいます。

学校や職場で、自分以外の人はみんな仲が良さそうに見えて、疎外感を強めることもあります。

他人の存在を過剰に意識して緊張感や苦痛を高めてしまう

対人恐怖の典型的なタイプと言えます。

●スピーチ恐怖

社交不安症の人が最も不安を訴えるケース。

会議やパーティーなど、大勢の前でスピーチする際、強いプレッシャーを感じて、頭の中が真っ白になって声が出なかったり、不安で声が震えたりします。

昇進なので人前に立つ機会が増えた人にあらわれやすく、他の状況ではほとんど不安を感じない、という人が多いのも特徴です。

●赤面恐怖

何かのきっかけで、他人の目を強く意識したのをきっかけに始まることがあります。

また、特定の場面で、顔が真っ赤になっているのを指摘され、それから人前が苦手になる場合もあります。

自分の表情や容姿などを、人から見られていると意識すればするほど顔が赤くなります。

そのため、人前に立ったり、異性の前に出たり、大勢の人が集まる場所などを避けるようになります。

●電話恐怖

自分の話が他の人に聞かれてることを意識して、オフィスで電話が取れなくなり、仕事に支障が出ます。

また、電話のベルが鳴っただけでも胸が高鳴り、相手からおかしな人だと思われるのが不安で、受話器を取っても言葉が出ないこともあります。

電話恐怖は、会社に勤めている若い女性に多くみられます。

●会食恐怖

自分が食べているところを人に見られていると思うと、緊張して食べられなくなったり、それを変に思われるのではないかと更に緊張してしまいます。

また、自分が食べている音が気になって喉が詰まったり、美味しそうに食べられないので同席者に申し訳ないと悩みを重ね、人前で食事をすることを極端に恐れるようになります。

会食恐怖もまた、若い女性に多いのですが、恋人や婚約者など自分にとって大切な人の前ほど症状が強くなり、食事が怖くて相手の家に行けないなど、特に重要な場面が困難になります。

●視線恐怖

視線恐怖の「視線」には2種類あります。

1つ目は、

  • 他人が自分に注目し、噂をしている気がする
  • 自分の行動が観察されているようで落ち着かない

などの「他人の視線が怖い」タイプです。

重症になって、妄想的になると、別の精神疾患(統合失調症など)の可能性もあります。

もうひとつは、自分の視線が、相手を不快にしているのではないかという「自分の視線をおそれる」タイプです。

この症状では、人と話す時の自分の視線にとらわれ、緊張を高めて、会話中どこを見たらいいのかわからなくなったり、会話が上の空になってしまうことがあります。

●書痙(しょけい)

書痙とは、元々は字を多く書く人が手を使い過ぎたために、痙攣や痛みなどが起こり、字を書くことができなくなる状態をいいます。

しかし、社交不安症では、手の使い過ぎではなく、人から字が下手だと思われるのではないかという緊張から起こります。

  • 黒板に字を書く
  • 書類にサインをする
  • 窓口で申し込み用紙に記入する

など、人前で文字を書こうとすると手が震え、止めようとすればするほど震えが酷くなったりします。

最後には、人目につかない一人の時でも、震えるようになったりします。

●振戦恐怖

振戦とは「震えること」を意味します。

パーキンソン病などの病気でも起こりますが、社交不安症の場合やは、人と接する場面で手足が震えてしまったことをきっかけに、そうした場面が怖くなってしまう症状です。

例えば、

  • 職場で来客にお茶を出そうとすると手が震えてしまう
  • 上司がチェックしているとキーボードを打つ手が震えてますます緊張する

といったケースがみられます。

●発汗恐怖

人と接する時、緊張と恐怖のあまり大量に汗をかいてしまう症状。

緊張した時、多少の汗をかくのは誰にでもあることですが、発汗恐怖では、人から話しかけられただけでぐっしょりと汗をかいたり、仕事で接客していると、額からぽたぽた流れ落ちるほどの汗をかいて、タオルが手が手放せなくなったりします。

結果、これらをきっかけに、人との関わりを避けるようになります。

●腹鳴恐怖

私たちの腸内には、ガスと液体があり、これが腸のぜん動と共に移動する時に発するのが腹鳴(ふくめい)です。

腹鳴恐怖は、会議中や公演中など大勢の人の前で自分のおならが鳴るのではないかと心配でたまらなくなります。

そのため、人が集まるところを避けたり、食事時間でなくても食べて出かける(おなかに十分食べ物を入れていあいと安心できないため)と、いった行動をするようになります。

●排尿恐怖

女性だけではなく、男性にも見られれる恐怖症で、例えば、

  • 職場のトイレに上司や苦手な人が入ってきた
  • 公衆トイレで後ろや横に並ばれた

など、人の存在を意識するとドキドキして排尿ができなくなる症状です。

「早くださなければ」

と思うとますます出なくなってしまいます。

人がいないトイレなら平気、というのも特徴です。

●自己臭恐怖

最近、若い人を中心に多くなっているのが自己臭恐怖で、これも社交不安症の症状のひとつ。

自分の体が変なにおいを発するため、人から嫌われている思い込み、人との接触を避けて不登校になったり、出社拒否に繋がることもあります。

実際には臭わないことがほとんどなのですが、わきが、汗の匂い、口臭などが原因だと思い込むのですが、まれに「おなら」ということもあります。

人前でおならを失敗してしまったことをきっかけに発症することもあります。

「においのために人が自分を避ける」

という思い込みが重症化し、確信的になると、「自己臭妄想(妄想性障害)」という別の病気になる可能性もあります。

分離不安症とは

パニック症などの不安症の患者さんは、幼児のころ「不安分離症」だった人が多く、最近の研究によると、パニック症の約40%にその傾向があるという報告があります。

不安分離とは、愛着を抱いている母親(またはそれにかわる人)から離れると、泣いたり、後を追ったりする反応のこと。

不安気質の幼児にはよくみられますが、ほとんどの子どもは母親の姿が見えなくても、しばらくすると戻ってくることを自然に理解するようになります。

しかし、子どもによっては過剰な不安を持ち、母親に危険がふりかかるなどの非現実的な想像をしたり、自分が迷子になる、誘拐される、などのありもしない心配をすることがあります。

こうなると、病的で不安分離症の状態といえます。

不安分離症では、

  • 母親と離れることが不安で幼稚園や学校に行くことを拒否する
  • 常に母親にまとわりつく
  • 母親がいなくなる悪夢を何度もみる
  • 母親から離れると頭痛・腹痛・吐き気などを起こす
  • 泣き叫んでかんしゃくを起こしたりする

などの行動があらわれることがあります。

パニック症患者には、幼児期にこのような不安症がすでにあることがわかっています。

一方で、子どものころの不安気質が長じて不安症を起こす、といった考え方もあります。


 
次回、「ストレス障害(PTSD)とはどんな病気か」へ続く


 

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